中国の「動態(ダイナミック)ゼロコロナ」政策と上海市の状況について

 上海市で新型コロナウイルスの規制が厳しくなっていることが、日本でも報道されています。実際のところ、いま、現地の状況はどうなっているのでしょうか。

 中国では上海市などの各地において、新型コロナウイルスの局所的な感染拡大がみられています。4 月 7 日時点の国内感染者数は 1,540 人で、そのうち上海市が 824 人、吉林省が 617 人でした。また、別に発表されている新規国内無症状感染者数は 2 万 2,561 人で、そのうち 2 万 398 人が上海市となっている。
 中国では、新型コロナウイルスへの対応として「動態(ダイナミック)ゼロコロナ」戦略を取っています(注 1)。習近平国家主席は 3 月 18 日に開催された中国共産党の中央政治局常務委員会で、「ダイナミックゼロコロナ」を堅持すると表明するとともに、「最小の代償で最大の感染防止・抑制効果をあげ、経済・社会発展に対する新型コロナウイルスの影響を最大限軽減すべく努⼒する必要がある」とも述べ、同戦略の経済的・社会的コストに対する配慮も⽰しました。
 4 月 6 日の国務院防疫メカニズムの専門家による記者会⾒においても、「ダイナミックゼロコロナ」の大方針を躊躇(ちゅうちょ)なく、揺るぎなく堅持し続ける旨があらためて表明されました(注 2)。
 さらに、4 月 8 日付の「人⺠日報」1 ⾯にも「ダイナミックゼロコロナ」堅持を主張する論説が掲載されました。
 同論説では、現在のオミクロン株は感染スピードが速く、潜伏感染の割合が⾼く、無症状感染者や軽症者が⽐較的多いことから早期発⾒による防止抑制がより困難になっているが、このような時にこそ、「ダイナミックゼロコロナ」の大方針を躊躇なく、揺るぎなく堅持し続けなければならないーーと指摘しています。
 また、「ダイナミックゼロコロナ」の本質はスピードと精密さにあり、小規模なうちに早期発⾒して感染を抑えることで、人⺠の身体の健康や生命の安全に対する危険を軽減できるだけでなく、社会経済の発展と新型コロナウイルスに対する防疫とのバランスを最大限に取ることができる。そして、「ダイナミックゼロコロナ」こそが「最小の代償で最大の防疫効果を得ようと努
⼒する」上での必然の要件で、また、同戦略は科学とルールを尊重するという点をよく体現していると評価しています。
 さらに、中国には、地域が広大で地域間の医療衛生条件の差が大きく、ワクチン接種において異なる集団間に不均衡が存在し、⾼齢者の人口が多いという背景があり、こうした背景を踏まえると、現段階では「ダイナミックゼロコロナ」が最適の選択肢で、なるべく早期に「ダイナミックゼロコロナ」を達成するよう努めることが最も経済的かつ有効な防疫戦略となると指摘しました。

<補足>
(注 1)︓中国政府や対策に携わる専門家の説明によると、「動態(ダイナミック)ゼロコロナ」とは、国内の「感染者の発生をゼロにする」ものではなく、感染者の能動的かつ迅速な発⾒を⾏い、感染者に対して速やかに疫学的調査、診断、隔離、治療をして、社区(コミュニティー)内で持続的に感染が広がることを防ぐという防疫戦略とされている。

(注 2)︓他方、国家衛生健康委員会新型コロナウイルス対応専門家チームの梁万年チーム⻑は、新型コロナウイルスの流⾏が収束したといえるための具体的条件として以下の 4 つを⽰しつつ、この条件を踏まえ、ウイルス⾃体の危険度やウイルス対策としてとり得る手段などを総合的に考慮した上であれば、新型コロナウイルスへの対応策の調整時期や、正常な生活に戻す時期を議論することができるとの⾒解を⽰している。
①ウイルスが変異によりさらに弱毒化し、発病率・感染⼒がさらに低下し、人への健康被害と生命への危険度がさらに低下した場合。
②ワクチンがより効果があるものとなり、重症化と死亡を防ぐだけでなく、感染を防止することができるようになり、重症化・死亡を防ぐ効果がさらに⾼くなった場合。
③現在の治療薬のほかに、さらに効果のある薬、特に特効薬ができ、症状の悪化を早期に⾷い止めることができるようになった場合。
④他国の感染状況が収まり、海外からの輸⼊症例予防の圧⼒が小さくなった場合。

■都市封鎖が続く上海市の段階解除について
 中国・上海市政府は 9 日、外出禁止解除の目安となる条件として「地区内の感染が 14 日間ゼロ」との基準を公表しました。感染リスクに応じて地区を 3 段階に分けて管理します。
 2022 年 4 月 11 日午前の市政府副秘書⻑・疫病予防対策指導グループ主任の発⾔に基づいた上海市都市封鎖の今後の解除ステップは以下の通りです。

1.検査の実施
直近 2 日間(4 月 9 日・10 日)で、合計 2,512 万人が検査を受け、その内、25,996 人が異常値を⽰し、その⼀部に対して再検査を実施していることが説明されています。
2.今後の管理
今後は、閉鎖制御区(封控区)、管理制御区(管控区)、予防区(防范区)の 3 区域に分けて、以下の通りの管理を実施します。

 4 月 11 日の発表では、第⼀次のリストでは、閉鎖制御区 7,624 か所、管理制御区 2,460 か所、予防区 7,565か所となっています。
 各区域で異なる管理が実施されますが、その概要は、以下の通りです。
(1)閉鎖制御区
1)管理
 過去 7 日以内に感染陽性が報告されたマンション(小区)、⾃然村、単位、場所が該当し、「7 日間の閉鎖管理+7 日間の在宅健 康観察」を実施する。
 7 日間の閉鎖管理期間は、区域閉鎖(マンション封鎖)、外出しない(住居内隔離)の対象となります。
 7 日間の閉鎖管理期間中に新たな陽性感染者が出なければ、7 日間の在宅健康観察を実施(マンション内に出ることは可能であるが、複数人が集まることは禁止)。
2)対応
 この 14 日間(7+7)に、新たな陽性感染者が出ず、13 日目の PCR 検査で地域内のすべてが陰性になれば閉鎖解除となり、予防区に調整する。
 7 日間の閉鎖管理期間中に感染陽性が出た場合、当該建物は、14 日間の期間終了まで封鎖する。当該建物以外のその他地域については 7 日間の在宅健康観察を実施。
 在宅観察期間中に感染陽性が出た場合は、状況に応じて対応する管理措置を決定する。
(2)管理制御区
1)管理
 過去 7 日間に陽性感染が報告されていないマンション、⾃然村、単位または場所が該当し、7 日間の在宅健康観察(マンション内に出ることは可能、マンションか らの外出は禁止。マンション内は複数人数の集合禁止)を実施する。
 各世帯は、安全確保を前提に、マンションなどの指定区域に⾏き、配給物資を受け取る。
2)対応
 7 日間の在宅健康観察期間中に感染陽性者が確認された場合、閉鎖管理区に調整し、対応する管理措置を実施する。
 7 日間の在宅健康観察期間中に新たな陽性感染がなく、6 日目にエリア内のすべてが陰性となった場合、管理制御を解除し、予防区に調整する。
(3)予防区
 過去 14 日間に陽性感染者が報告されていないマンション、⾃然村、単位・場所。
 所在地の街鎮の範囲で適切な活動を⾏い、閉鎖・管理区には移動できない。
 予防区で感染者が出た場合、閉鎖制御区に調整する。

 以上、都市部のマンション単位の感染状況で、3 種類に分類され、その後の状況に応じて、随時調整されていく予定です。また、予防区になった場合でも、活動範囲は極めて制限されるので、封鎖解除にはまだ時間がかかりそうです。

以上