「サプライチェーン安全規定」の施行と日本企業の実務的対応
- 2026 年4月7日に中国で「産業チェーン・サプライチェーンの安全に関する規定」が施行されました。この規定が制定された背景や、直近の中国の輸出規制強化の動きも踏まえて、日本企業への影響と今後の展望について教えてください。
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■ 制定の背景:法的空白の穴埋めと経済安全保障の強化
中国政府(党中央・国務院)は、産業チェーンおよびサプライチェーンの安全確保を極めて重要視している。これまで中国には輸出管理法などの関連規定は存在したものの、サプライチェーンの安全面に特化した専門的な立法は存在しなかった。習近平国家主席の指示のもと、国内外のリスクへの対応力を高め、サプライチェーンの安全性を向上させるため、法的な空白を埋める必要があったことが最大の背景である。
同時に、他国が自国のサプライチェーン安全を確保するための立法を次々と進めていることに対抗し、中国独自の供給網を保護・統制する狙いも含まれている。■ 日本企業への影響:情報収集リスクと強力な報復措置
本規定の施行により、日本企業の中国ビジネスには以下のような新たなリスクが生じる。
情報収集活動に対する処罰リスク
規定では、「いかなる組織・個人も、中国国内で産業チェーン・サプライチェーンに関わる調査等の情報収集活動を違法に実施した場合、法に従って相応の措置を講じる」と明記された。日本企業が自社のサプライチェーン上のリスク評価やデューデリジェンスを目的として中国内で調査を行う際、当局から違法な情報収集活動とみなされ、法的責任を追及されるリスクが高まっている。
外国への報復措置と輸出入制限
外国や国際機関が中国に対して差別的な禁止・制限などの措置を講じた場合、中国当局は「産業チェーン・サプライチェーンの安全調査」を実施できる権限を持つ。調査の結果次第では、関連貨物・技術の輸出入の禁止・制限や、特別費用の徴収といった報復措置が講じられる。他国の対中規制に日本企業が巻き込まれたり同調したりした場合、直接的な制裁対象となる恐れがある。重要分野の国家統制強化
国の安全に関わる重要分野のリスト制度が構築され、物理的備蓄や生産能力の備蓄(企業の在庫・生産力の動員)が法的に規定された。有事や緊急時には、中国国内に拠点を持つ日本企業の在庫や生産能力が当局の調整下に置かれる可能性がある。
■ 今後の展望と日本企業が取るべき対応策
今回の規定施行は、中国が進める一連の経済安全保障強化の延長線上にある。すでに2026年1月6日には、日本の軍事関連用途等に向けた両用品目の輸出を包括的に禁止する措置が施行された。続く2月24日には、防衛関連企業や研究機関など日本企業40社を名指しで輸出規制の対象とする「管控名単(輸出規制管理リスト)」「関注名単(注視リスト)」が史上初めて発動された。これらの規制により、日本の防衛関連企業や素材メーカーへの部品供給が即日ストップしたり、厳格な審査により事務コストやリードタイムが大幅に増大したりする実害が生じている。
中国政府は、自国のサプライチェーンやレアアースなどの重要資源を、外交的圧力や報復のための強力な政策ツールとして活用する姿勢を鮮明にしている。日本企業は「自社は安全保障とは無関係」というこれまでの前提を捨て、中国の規制リスクがサプライチェーン全体に波及することを前提とした経営判断が求められる。今後の対応策として、以下の2点が急務となる。
調達先の多様化:レアアースなどの中国依存度が高い資源・部品について、オーストラリアや東南アジアなど第三国へ調達先を分散させること。
スクリーニング体制の強化:自社や取引先・物流業者が中国の規制リストに含まれていないかを継続的に確認し、法務・コンプライアンス部門と連携して中国関連の契約を全件レビューする体制を構築すること。
中国による経済的威圧は長期化・広範化する可能性が高い。リスクの早期警戒とサプライチェーンの再編を迅速に進めることが不可欠である。以上

