台湾の知財制度―日本と同じに見えて、法典の地図が違う(1)
- 中国に続いて、台湾でも商標や著作権を取りたいと考えています。台湾は比較的日本と制度が近い印象ですが、どうなっているでしょうか。どこが違うのかを教えてください。
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台湾の知財制度は、日本の制度をある程度知っている方ほどわかったような気になりやすい一方、同じ顔をしていて中身が異なることで、部分的にトラブルが起きやすいとも言えます。前編では制度の地図と権利の仕組みを、後編で日本との差分を具体的に整理します。
1.法令の地図―対応関係は一対一ではない
台湾の知財関連法令と日本の対応法令を並べると、次のようになります。分野 台湾 主管機関 日本の対応 商標 商標法 經濟部智慧財產局
(TIPO)商標法 意匠 專利法(設計專利) TIPO 意匠法(独立法) 特許 專利法(発明專利) TIPO 特許法 実用新案 專利法(新型專利) TIPO 実用新案法 著作権 著作權法 TIPO 著作権法(文化庁) 営業秘密 營業秘密法 - 不正競争防止法 不正競争・広告表示 公平交易法(§21、§22、§25) 公平交易委員會 景表法+不競法+独禁法に分散 一覧にすると、日本の法律と一対一で対応していない箇所が二つあります。
2.意匠は独立法ではない
台湾では、発明・新型・設計の三類型が「專利法」という一本の法典に収まっています。意匠にあたる設計專利は專利の一種であり、出願・審査・無効の枠組みは特許と共通です。日本の意匠法という独立法を前提に条文を探すと、そもそも見る場所がずれます。
3.表示規制は公平交易法一本に集約されている
日本では、不当表示は景品表示法、他社の周知表示との混同は不正競争防止法と、入口が分かれます。台湾はこれを公平交易法の§21(虚偽不実・誤認を招く表示)と§22(他人の表徵との混同)で連続的に捕捉します。つまり、広告表現の適否と他社商標の使い方を「別々の問題」として切り分けられません。ウェブサイトの訴求文言を見直す際は、両方を同時に検討する必要があります。
なお主管庁も、商標・特許・意匠・著作権のすべてをTIPOが所管します。日本のように特許庁と文化庁に分かれていない分、照会先と判断の出所が一元化されているのは実務上の利点です。4.権利がどう発生し、どう失われるか

ここで押さえていただきたい点が三つあります。
第一に、商標は登録されて終わりではありません。註冊公告後の一定期間は、何人からでも異議を申し立てられます。公告を見た同業他社が動くことは実際にあり、登録証を受け取った時点が安全確定ではありません。
第二に、設計專利は更新できません。商標が更新によって事実上永続しうるのに対し、意匠は期間満了で必ず切れます。長く売り続ける主力商品をどの権利で守るのか、権利の組み合わせを設計する必要があります。
第三に、台湾には著作権の登録制度がありません。「登録証で権利者であることを示す」ができないため、自社が権利者であると立証する場面に備え、原データ、作成日時、制作委託契約といった制作過程の記録を残す実務が要ります。
後編では、日本との具体的な差分を、実務への影響が大きい順にご説明します。
(※)台湾商標法、專利法、著作權法、公平交易法、消費者保護法(全國法規資料庫)、經濟部智慧財產局(TIPO)公表資料ほか
以上


