中国・工作機械の安全規格が8月施行――CCC対象外でも免れない義務と、日本メーカーの責任

日本で製造した工作機械を中国の販売代理店経由で納入しています。CCC認証の対象外なので、中国側の規制対応は代理店に任せてきました。ところがこの8月に工作機械の強制性国家標準が改正されたと聞きました。日本のメーカーである当社に、中国の法律上の義務は生じるのでしょうか。

 ―― 義務は生じます。しかも今回の改正は、中国側の対応を代理店任せにしてきた日本メーカーにとって、体制を見直す契機になります。
 中国は日本の工作機械にとって最大の市場です。日本工作機械工業会の統計によれば、2024年の中国向け受注額は3,371億円で、外需受注額1兆436億円の約32%を占め、国別で第1位でした。2026年に入ってからも勢いは続き、1~6月の中国向け受注額は約2,932億円、前年同期比56.4%増となっています。その市場に、この8月、新しい強制性国家標準が施行されました。

第1部 8月1日施行の新規格と、CCC対象外でも適合義務が生じる仕組み

1.GB 15760-2025とは何か
 2026 年8月1日、《金属切削机床 安全防护通用技术规范》(GB 15760-2025)が施行されました。2025年8月1日に発布され、1年の移行期間を経ての施行です。主管は工業和信息化部です。
 注目すべきはその範囲です。従来の共通規格であったGB 15760-2004に加え、機種別に分かれていた個別の安全規格をあわせ、計8本の強制性国家標準を1本に統合代替しました。ただし、統合されたからといって確認すべき規格が1本で済むわけではありません。新規格には他の規格への引用があり、実務上は新規格を軸に、引用規格やその他の適用規格まで含めて確認することになります。
 適用の起点は「製造時期」で切られる可能性があります。広東省市場監督管理局の《数控车床产品质量监督抽查实施细则》(2026年版)は、2026年8月1日より前に製造された数控旋盤には旧規格を、同日以降に製造されたものには新規格を適用すると区分しています。地方の抽査細則にすぎませんが、施行前に製造した在庫品や既納入設備まで一律に改修が求められる、という読み方は避けるべきでしょう。自社製品については、製造・輸入・販売の時期と関係する実施規定を踏まえ、個別に確認してください。

2..「GB」と「GB/T」を見分ける
 中国の国家標準には2種類あります。番号が「GB」で始まるものが強制性国家標準、「GB/T」で始まるものが推奨性国家標準です。この1文字の有無が、法的な扱いを分けます。
 GB 15760-2025 には「/T」がありません。つまり強制性です。標準化法第2条第3項は「強制性標準は必ず執行しなければならない」と定め、同法第25条は「強制性標準に適合しない製品・サービスは、生産、販売、輸入または提供してはならない」としています。第25条が「輸入」を明示している点は、輸出する側にとって重要です。適合しない製品は中国で売れないだけでなく、そもそも輸入してはならないことになります。


3.CCC認証と強制性標準は別系統である
 ここが最も誤解の多いところです。CCC認証(強制性製品認証)の対象品目リストに自社製品が載っていないことと、強制性国家標準への適合義務がないことは、まったく別の話です。
 CCCは「認証を受けなければ出荷・輸入・販売できない」という手続の制度で、対象は目録で限定列挙されています。工作機械はこの目録に含まれていません。一方、強制性国家標準は「その内容に適合していなければならない」という実体の義務であり、認証手続の有無とは無関係にかかります。つまりCCC対象外であることは「認証手続が不要」を意味するにすぎず、「何も守らなくてよい」ではありません。CCCマークが不要だから中国側の規制は関係ない、という整理は成り立たないのです。
 なお、強制性標準は安全分野に限りません。たとえば工業・科学・医療機器の電磁妨害を規制するGB 48242025 が2026年3月1日に施行され、産業用ロボットなどが新たに適用範囲に加わりました。自社製品にどの強制性標準がかかるかは、製品分野ごとに個別の確認が必要です。

  以上