上海ペットフェアアジア2026開催中―「精養」への転換と、日本産フードの壁

上海で今年もペットフェアアジア(亜洲寵物展)が開催されているそうですが、どのような状況でしょうか。

 8 月19日から23日まで、上海新国際博覧中心で第28回亜洲寵物展覧会(Pet Fair Asia 2026)が開催されています。展示面積32万平方メートル超、出展社2,600社超。アジア最大級のペット見本市で、今年は初日を招待制のVIP商談日としました。弊社のクライアントがペット用健康食品で出展しており、事前の出展準備から弊社スタッフや関係者が対応してきました。今日はまだ2日目ですが、これまでの同展示会の様子をお知らせします。

1.展示会の概況
 会場は17の展示ホールに加え、サプライチェーン専門館10館と屋外エリアで構成されています。前回(2025年・第27 回)と比べ、展示面積は31万㎡から32万㎡超へ、専門館は8館から10館へ拡大しました。出展社数は2,600 社超で、前年とほぼ同水準です。主催者は会期中、業界関係者13万人超、一般来場者39万人超、合計50 万人規模の来場を見込んでいます。
 その規模は、日本最大級のペットイベント「インターペット」と比較すると、より鮮明になります。今年4月に東京ビッグサイトで開催されたインターペットの来場者は、業界関係者約2万人、一般来場者約4万人の計約6万人でした。会場面積は約4万~5万㎡で、東京ドーム約1個分に相当します。これに対し、Pet Fair Asia(PFA)は約32万㎡、東京ドーム約7個分に及びます。出展社数も、インターペットの約600~900社に対し、PFAは2,600社超と、圧倒的な規模を誇ります。

 この違いは、両イベントの性格にも表れています。インターペットは、ペット同伴で楽しめる一般消費者向けの要素が強く、日本国内の市場トレンドを発信する場として定着しています。一方、PFAは一般来場者向けの展示に加え、原材料、製造設備、OEM・ODMなど、ペット産業のサプライチェーン全体を網羅する国際的な商談プラットフォームとしての機能が際立っています。消費者が身近に最新のペット文化を体験する東京と、世界のペットビジネスが大規模に集結する上海。両者の違いは、単なる会場規模だけでなく、それぞれが担う役割にも明確に表れています。
 新設テーマ館は、進口精品館(輸入プレミアム館)、精緻養猫生活館、人寵生活館の3つ。主催者が掲げたキーワードは「精養」でした。

2.出展トレンド―「量」から「精」へ
 主催者が掲げた「精養(ジンヤン)」は、飼い主が1匹にかける手間とお金を細かく、丁寧にしていくという意味です。今回の出展内容は、まさにこの方向で共通していました。
 スマート機器では、猫の顔と行動を認識して体重・排泄回数・飲水量を個体別に記録するAI猫トイレ、心拍・体温・心拍変動から健康状態や熱中症リスクを推定する装着型デバイス、鳴き声を感情カテゴリーに分類する音声翻訳機が並
びました。単なる自動化から、健康データの取得と解釈へ軸足が移っています。
 フードは高肉含有率を競う段階を過ぎ、泌尿器、腸、免疫、避妊去勢後、老齢期といった機能別・ライフステージ別の細分化が進みました。医療周辺では、1回の投与で12週間効く駆虫薬や、家庭で虫・ダニを撮影してAI判定する検査機器が登場。犬猫以外では、オウムの品種別フードや、オウム向け医療保険まで出展されています。


3.市場は減速したのか
 2025 年の中国都市部の犬猫消費市場は3,126億元、前年比4.1%増でした。飼育数は犬5,343万匹、猫7,289 万匹、1匹あたりの年間支出は犬3,006元、猫2,085元です。
 成長率は2021年の20%台から直近は数%台に落ち着きましたが、単純な失速と読むのは早計です。飼育数の伸びが鈍る一方で1匹あたりの支出は増え続けており、市場は「頭数の拡大」から「1匹あたり単価の引き上げ」へ駆動源を切り替えつつあります。業界団体の関係者は、処方食の浸透率が中国ではまだ2%未満で、競争軸が単品の機能から生活様式全体へ移りつつあると指摘しています。

4.日本企業から見た論点
 本館はJETRO上海事務所が組織し、31ブランドが出展しています。主食、ウェット、間食、機能性食品、用品、洗護用品と、品目は幅広く並びました。ただし制度面には大きな制約が残ります。日本は中国が輸入を認めるペットフードの生産国リストに入っておらず、2026年8月時点で、日本産の犬猫用フードを通常貿易で直接輸出することはできません。


 いなばペットフードが青島に独資の生産会社を設けたり、弊社のクライアントが現地工場でのOEM生産に踏み切ったのも、この障壁への対応からです。犬猫用缶詰は進境動植物検疫許可証が不要とされていますが(海関総署公告2018年第51号)、検査検疫そのものが免除されるわけではありません。
 飼料の検査検疫を定める規章の改正(海関総署令第283号)は今年11月1日に施行され、国別アクセスと境外生産企業の登録という二段構えが改めて明文化されます。用品や機器であれば市場は開かれています。まずは自社製品がどの制度の枠に入るのかを、HSコードと仕様の単位で確認することが出発点になります。
 中国のペット市場は、伸びが止まったのではなく、伸び方が変わりました。数を追う市場から、1匹にどれだけ手をかけるかを競う市場へ。問われるのは、その「手のかけ方」に自社の強みを載せられるかどうかです。

※第28回亜洲寵物展覧会公式発表、新華網、澎湃新聞、上海証券報、《2026年中国寵物行業白書》、JETRO「ペットフードの輸入規制、輸入手続き(中国)」ほか

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