中国のロボット産業について

 中国の北京冬季五輪の放映では、様々なロボットが活用されていて驚かされました。中国のロボット産業の状況はどうなっているのか教えてください。

 工業・情報化部、国家発展改革委員会など 15 当局がこのほど、「『第 14 次五カ年計画』ロボット産業発展計画」を発表しました。それによると、2025 年を目途に、中国は世界のロボット技術イノベーションにおける先端製造業の集積地となり、ロボット産業の先進国になることを目指しています。
 中国は 8 年連続で世界最⼤の産業用ロボット消費国であり、20 年に製造業ロボット密度は⼈⼝ 1 万⼈あたり 246台に達し、世界平均の 2 倍近くになりました。産業用ロボットの応用分野はすでに⾃動⾞や電子などの 52 の産業分野をカバーし、サービスロボットや特殊ロボットが倉庫・物流、教育・娯楽などで⼤規模に活用されています。今後はさらにメーカーの再編・統合⽀援などを通じて国際競争⼒を⾼め、技術⼒が⾼いハイエンド製品の供給を増やすとしています。

■製品の⾼度化・スマート化を推進
 現在、中国では産業用ロボット以外に掃除用ロボットなどのサービスロボットが生活に入り込んでおり、様々な分野でニーズが激増し、⼈々が先進的な生活に憧れを抱く一方で、中国のロボット産業にはまだまだ課題が多いことも指摘されています。そこで、中国のロボット産業を⼤きく、①産業用ロボット、②サービスロボット、③特殊ロボットの 3 分野に分けて、重点的に発展させる計画です。
 まず、①産業用ロボットの分野では、⾃動⾞、宇宙航空、鉄道交通などに向けた溶接ロボット、半導体産業に向けた真空(洗浄)ロボットなどの開発。また、②サービスロボットの分野では、農業ロボット、鉱業用ロボット、建設ロボット、医療・リハビリロボット、介護・介助ロボット、家事⽀援ロボット、公共サービスロボットの開発。そして最後の③特殊ロボットの分野では、水中ロボット、セキュリティロボット、危険作業ロボット、衛生・防疫対策ロボットの開発に重点を置く。

スマート巡回検査ロボットに大きな将来性、市場需要は 1000 億元に
 いま中国国内で注目されているスマート巡回検査ロボットは、新しいタイプのサービスロボットです。主に生産設備の監視に用いられ、システム内の設備の状態をタイムリーにフィードバックすることで、技術者が迅速に問題点を⾒つけ、メンテナンスを⾏えるようにします。近年、このような新しいタイプの巡回検査ロボットは電⼒、トンネル、冶⾦などの分野で広く使われるようになり、販売市場が拡⼤しています。
 2018 年から 2020 年までの中国における巡回検査ロボット市場の総需要は約 477 億元(1 元は約 18.4 円)、年平均需要は約 159 億元で、スマート巡回検査の市場需要は将来 1,000 億元(約 1 兆 8,000 億円)に達したもようです。こうしたロボット技術の進化やロボット関連技術者を増やすことは、労働⼈⼝減少や生産性向上など社会課題の解決につながります。
 国際ロボット連盟(IFR)によると、世界最⼤の産業用ロボットの市場となっている中国では、年間の新規設置台数に占める外国メーカーと中国のローカルメーカーの⽐率はほぼ一定で、外国メーカーが約7割、中国ローカルメーカーが約3割のシェアとなっています。しかし、今後は中国ローカルメーカーの追い上げが始まり、ロボットを取り巻く環境整備や技術競争がより激しくなることが予想されます。

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