アメリカ産の乳児用粉ミルクからエンテロバクター・サカザキが検出、中国で話題に

 アメリカ産の乳児用粉ミルクからエンテロバクター・サカザキが検出され、中国のニュースで話題となっていると聞きました。どういった状況か教えて下さい。

 アメリカの薬品・乳製品製造会社のアボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories)は、自社公式サイトにて、現在販売している3つの乳児用粉ミルクを自主回収すると発表しました。自主回収するのは、米ミシガン州の工場で生産されている Similac、Alimentum、EleCare の3種類の乳児用粉ミルクです。メーカーによると、ミシガン州の工場にてエンテロバクター・サカザキ(Enterobacter sakazakii)が発見されたとのことで、現在も調査が行われています。エンテロバクター・サカザキは、環境条件により発生する病原菌であり、0〜6ヶ月の赤ちゃん、特に早産で産まれた乳児や出生時に低体重で産まれた乳児、および免疫力が弱い乳児に対して深刻な悪影響をもたらします。

エンテロバクター・サカザキとは?
 ヒトや動物、環境中に確認される多数の菌種を含む腸内細菌科 Enterobacter 属の細菌です。この細菌は、特に乳幼児の髄膜炎や腸炎の発生に関係しているとされています。
 感染した乳幼児の 20〜50%が死亡したという事例の報告もあり、死亡に至らなかった場合も、神経障害等重篤な合併症が継続する。成人が感染した場合は、その症状はかなり軽度であるとされています。

 アメリカ食品医薬品局(FDA)の公式サイトでは、消費者に対して同社の乳児用製品を購入しない・食べないように呼び掛けています。該当商品の製品コードは、頭数字が 22〜37、容器コードは K 8、SH あるいは Z2 で、賞味期限は 2022 年 4 月 1 日以降の商品が対象です。

中国税関総署の対応
 中国税関総署の発表によると、中国国内での該当商品の販売状況を調査した結果、該当商品は一般貿易を通じて中国に輸出されていないことが分かりました。しかし、アボット・ラボラトリーズの関連企業が生産した乳児用栄養補充剤「喜康宝貝添」が中国へ輸出された記録が見つかったため、アボット・ラボラトリーズ中国は自主回収を行っています。
 一般貿易を通じて中国に輸出されていないということは、必ずしも中国国内の消費者が該当商品を“購入することができない”という意味ではありません。現代は国内外の越境 EC サイトから簡単に海外商品を購入する事が出来ます。そのため税関総署は国内消費者に対して、今回問題の発生した乳児用粉ミルクについて、「該当商品をいかなるルートでも購入してはならない」、「直ちに同社商品の摂取を停止するように」と発表しました。もし、越境 EC などの非一般貿易ルートを通じて当該企業、または関連企業の乳児用粉ミルクを購入した場合は、直ちに摂取を止めるように警告しています。


実店舗での購入が安全?
 最近は越境 EC が普及しているため、消費者は海外商品を気軽に購入する事が出来ます。また、越境EC は一般貿易と比べて消費者が購入しやすい仕組みになっており、同時に個人使用目的での売買となるため輸出規制も一般貿易と比べて緩くなります。しかし、便利である反面、今回のような問題に遭遇する確率も高くなることが中国国内で指摘されています。
 消費者は、越境 EC を利用する際に注意して商品を購入しなければならないというわけです。日本から食品関連商品を一般貿易で輸出するときは、中国当局の検査が厳しいため日本の業者は苦労しますが、一方で中国国の信頼の出来る実店舗で販売されている商品は安心感があり、信頼されているということも認識しておく必要があります。

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