中国・工作機械の安全規格が8月施行――CCC対象外でも免れない義務と、日本メーカーの責任(2)
- 日本で製造した工作機械を中国の販売代理店経由で納入しています。CCC認証の対象外なので、中国側の規制対応は代理店に任せてきました。ところがこの8月に工作機械の強制性国家標準が改正されたと聞きました。日本のメーカーである当社に、中国の法律上の義務は生じるのでしょうか。
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先週は、施行された強制性国家標準「GB 15760-2025」の内容と、CCC対象外でも適合義務がかかることを確認しました。今週は、日本のメーカー自身に中国法上の義務や責任が及ぶのかを、中国製品品質法に即して見ていきます。
第2部 日本メーカー自身に及ぶ義務と責任4.行政上の義務と民事上の責任は、主体が違う
中国製品品質法(《中华人民共和国产品质量法》。現行は2018年12月29日の第三次修正版)の第2条で「中華人民共和国境内において製品の生産・販売活動に従事する者は、本法を遵守しなければならない」と定めています。表示の是正命令や市場監督部門の抽査対応といった行政上の対応は、中国国内の輸入者・販売者が主要な主体です。その意味では、代理店に委ねてきた実務は間違っていません。
ただし民事責任は別です。第41条は生産者の無過失責任を定め、第43条は被害者が生産者・販売者のいずれに対しても賠償を請求できるとしています。この「生産者」には日本側の製造者が含まれる可能性があります。外国メーカーへの中国法の適用は管轄や準拠法の判断にもよりますが、条件が整えば、被害者が日本のメーカーを直接訴えることは制度上あり得ます。
さらに第46条は「欠陥」を定義し、人体の健康ならびに人身・財産の安全を保障する国家標準がある場合には、当該標準に適合しないことをもって欠陥とするとしています。先週解説したGB 15760-2025(金属切削工作機械の安全防護に関する強制性国家標準。従来の8本を統合し、2026年8月1日実施)への不適合は、まさにこの欠陥認定における重要な根拠になります。もっとも、賠償責任が成立するには損害の発生や因果関係も必要ですし、逆に、GBに適合していればそれだけで欠陥なしと認められるわけでもありません。
5.中国語表示の「中身」は日本メーカーにしか決められない
第27条は、製品または包装上の標識について、品質検査合格証明を有すること、中国語で製品名称・製造工場名・所在地を表示すること、使用が不適当な場合に人身・財産の危険を生じうる製品には警示標志または中国語の警告説明を付すことなどを求めます。第36条により、この要求は販売者にも及びます。
工作機械のように据付を伴う設備では、銘板・警告ラベル・取扱説明書が中国語で整っているかが問われます。翻訳・制作・貼付といった作業そのものは代理店と分担できます。ただし、どの危険源についてどう警告するかという中身を決められるのは、設計を握る日本メーカーだけです。分担する場合でも、内容を確認し適切な安全情報を提供できる体制が必要です。
6.請求権の期間と、資料の保管期間は別の問題
第45条は、損害賠償請求権の時効を「知りまたは知り得た時から2年」とし、あわせて「欠陥製品を最初の消費者に引き渡した時から10年」で請求権が消滅すると定めています。ただし、この10年には、明示した安全使用期をまだ経過していない場合はこの限りでない、という例外が付いています。また民法典第188条は一般の訴訟時効を3年としつつ「法律に別段の定めがある場合はその定めによる」としており、両者の関係は中国国内でも整理が定まっていません。
ここで区別すべきは、請求権が存続する期間と、技術資料を何年保管するかは別の問題だということです。保管期間は製品の実際の使用年数、保証条件、紛争が起こりうる時期を踏まえて設定するもので、時効の年数をそのまま当てはめるものではありません。10年、20年と使われる設備なら、法定の期間より長い保管が必要になる場面もあります。
なお製品品質法は、2023年10月に修訂草案が公表され、現行74条から111条への拡充が提案されています。請求権の存続期間を引渡しから20年に延長する案(訴訟時効は3年)、強制性標準への不適合に対する罰金を貨値金額の等値以上5倍以下とし、情状が重い場合は5倍以上10倍以下とする案などが含まれます。2026年度の国務院立法工作計画では「予備提請」の位置づけで、成立時期は未定です。2023年案がそのまま成立すると決まったわけではありませんが、技術資料の保管方針を考えるうえでは念頭に置く価値があります。7.実務としてできる対応
まず、中国向け機種が同規格のどの要求に該当するかを、機種ごとに棚卸しすること。従来の適合根拠がそのまま通用するとは限りません。引用規格も含めた確認が要ります。
次に、適合を説明できる資料――リスクアセスメント記録、型式試験報告書、設計変更履歴――を製造番号と紐づけて保管することです。条文が直接求めるものではありませんが、監督抽査や顧客審査、民事上の立証の場面で対応する資料がすぐに出せるかどうかで、説得力が大きく変わります。
最後に、代理店との契約における品質保証条項と責任分担の確認です。責任が自動的に日本側へ移るわけではありませんが、責任の原因、契約条件、適用法によっては、中国側から日本メーカーへ賠償分の請求(求償)が及び得ます。製品品質法第43条にも、販売者が被害者に支払った賠償を生産者に請求できることが定められています。
ご質問への答えとしては、行政上の対応の多くを代理店に委ねられる一方で、民事上の責任と安全情報の中身については、日本のメーカーである貴社にも役割が残るということになります。
※GB 15760-2025《金属切削机床 安全防护通用技术规范》(国家標準全文公開系統・強制性国家標準/2025年8月1日発布・2026 年8月1日実施)、GB 4824-2025《工业、科学和医疗设备 射频骚扰特性 限值和测量方法》、《中华人民共和国产品质量法》(2018年第三次修正)、同修訂草案(2023年公開征求意見稿)第80条・第83条、《中华人民共和国标准化法》(2017年修訂)第2条・第25条、《中华人民共和国民法典》第188条、広東省市場監督管理局《数控车床产品质量监督抽查实施细则》(2026年版)、市場監管総局「強制性製品認証目録描述与界定表」(2023年第36号公告)ほか以上


