中国「製品品質法」改正の動向―一般工業製品にもリコール制度拡大か(1)

中国では、製品品質法の改正が検討されていると聞きました。2026年の立法計画ではどのように位置づけられ、どのような改正が予定されているのでしょうか。

 中国の製品品質に関する基本法である「中華人民共和国製品品質法(产品质量法)」について、現在、全面的な改正が検討されています。2026 年 5 月に公表された「国務院 2026 年度立法工作計画」では、製品品質法改正草案について、「预备提请全国人大常委会审议产品质量法修订草案」と記載されました。日本語では、「製品品質法改正草案を全国人民代表大会常務委員会の審議に提出するための準備案件」と位置づけられた、という意味です。
 ただし、注意が必要なのは、「预备提请」とは、正式に全人代常務委員会へ提出する「提请」とは異なるという点です。2026 年中の正式提出、審議開始、成立、施行までが確定したわけではありません。ただし、国務院の年度立法計画に明記されたことから、製品品質法改正に向けた準備作業が今後本格化すると見られています。

1.現行74条から111条へ全面的に拡充
 今回の改正の基礎となっているのが、国家市場監督管理総局が2023 年10月18 日に公表した「中華人民共和国製品品質法(公開意見募集稿)」です。
 現行の製品品質法は第74条までですが、2023年の意見募集稿は第111条まで拡充され、章立ても全面的に組み替えられました。同年 11 月 18 日まで行われた意見募集では、100 余りの組織・個人から 372 件の意見が提出され、製品の適用範囲、欠陥製品のリコール、電子商取引プラットフォームの管理、ネット販売、品質表示、監督抽査、法的責任などについて検討が行われています。
 現段階では、この 2023 年意見募集稿の内容がそのまま最終法になるとは限りませんが、改正の基本的な方向性を把握するうえで重要な資料となります。

2.製品品質安全事故の報告制度を新設
 第一の大きな改正点は、製品品質安全事故の報告制度です。
 意見募集稿第16条では、生産者が、製品の使用中に人身の死傷、重大な疾病、比較的大きな財産損失などの事故が発生したことを知った場合、原則として 2日以内に、事故発生地の省級市場監督管理部門へ事故情報を報告しなければならないとしています。
 販売者その他の事業者についても、生産者への通知と当局への報告が求められます。また、生産者は事故情報の報告日から7営業日以内に、事故調査報告書を提出しなければなりません。
 現在、日本企業の中国現地法人や販売代理店では、顧客からの故障情報や事故情報が営業部門やサービス部門にとどまり、本社の品質保証部門へ迅速に共有されないケースもあります。改正案が成立した場合には、中国国内で事故情報を把握した時点から、短期間で当局報告の要否を判断できる体制が必要になります。

3.一般工業製品を含むリコール制度へ
 第二の重要な改正点は、欠陥製品のリコール制度です。
 第17条では、設計、製造、警告表示などを原因として、同一ロット、型式またはカテゴリーの製品に共通して欠陥が存在する場合、生産者に対し、次の対応を義務づけています。
 生産の停止、市場監督管理部門への報告、消費者および関係事業者への通知、そして自主的なリコールです。販売者その他の関係事業者にも、対象製品の販売・取扱いを停止し、リコールに協力する義務が課されます。
 さらに、第 39 条では、省級以上の市場監督管理部門が、品質安全リスク監視、傷害情報、監督抽査、事故報告などに基づき、欠陥調査を実施できるとしています。

 第40 条では、欠陥が認定された場合、当局が生産者にリコールを通知し、生産者が従わない場合には、リコールを命令できる制度が規定されています。
 もっとも、中国で現在リコール義務が存在しないわけではありません。生活消費用の製品については「消費品召回管理暫行規定」があり、欠陥消費品の生産者にはリコール義務が課されています。また、自動車についても「欠陥自動車製品召回管理条例」に基づくリコール制度が存在します。
 今回の改正案の重要性は、消費財や自動車などの個別分野に限らず、一般工業製品を含む製品全般について、法律レベルの横断的なリコール制度を設けようとしている点にあります。意見募集稿第2条は、対象となる製品を「加工・製造され、販売に供される物品」と定義しており、消費財に限定していません。建設工事そのものは適用対象外ですが、建築材料、建築部品、設備は対象となります。したがって、B2B向けの機械、設備、電気製品、部品なども、原則として制度の対象に含まれる構造です。

(※)「市场监管总局关于征求《中华人民共和国产品质量法(公开征求意见稿)》意见的通知

  以上