中国産米「五常大米」が⽇本で⾼額になる理由
- 中国では、人型(ヒューマノイド)ロボットが工場の中で作業をしていると聞きました。実態はどこまで進んでいるのでしょうか︖
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先月3月11日 〜 24日に東京ビッグサイトで「FOODEX JAPAN 2025 - 第50回 国際食品・飲料展」が開催されて参加してきました。
この展示会を視察に来た⿊⻯江省の食品会社幹部4名のアテンドと通訳を弊社は依頼され、その幹部との会話の中で、彼らは中国の五常大米はとてもおいしいと自慢してました(「五常」︓⿊⻯江省ハルピン市の近くにある都市の名前)。
このコメ不⾜の折に、何でそのおいしいという五常大米を輸入しないのかと素朴な疑問が湧いてきたので、翌日、農⽔省に電話して、米の担当部局に繋いでもらい話を聞きました。以下にそのヒアリングを踏まえて、著者が情報収集した内容をレポートにまとめてみます。1.中国産米が⽇本で⾼額になる理由
中国から直送の新米なのに、国産より価格が高くなる。中国で有名な五常大米5kg(中国のネットスーパーで49.9元︓約1,000円)が日本では7,330円で販売される一方、国産米は5kgで4,000〜5000円です。この価格差には、日本の農業保護政策と複雑な貿易制度が絡んでいるようです。
※「Qoo10」の中国「東北産米2.5kg 五常大米」の販売サイト
https://www.qoo10.jp/gmkt.inc/Goods/Goods.aspx?goodscode=1113220533
農⽔省の説明では、中国からの米の輸入は年間77万トンと決められており、国際協定で決められたMA貿易と⾔われているそうです。⺠間の取引は年間300〜400トン。関税はキロ当たり49円で、農⽔省に収める追加課⾦が292円。合計で、キロ当たり341円と決められているそうです。つまり5kgの米には、1,705円、10kgには3,410円が上乗せされ、ここから、業者のマージンや物流費が上乗っていくことになります。
すなわち、341円/kgのキーワードを説明すると、中国産米には以下の関税が課されます︓
•基本関税(49円/kg)︓通常の輸入品に適⽤
•調整⾦(292円/kg)︓国内農家保護のための追加課⾦(給付⾦︖)
合計341円/kgという関税は、日本がWTO協定に基づき設定した「農業保護の盾」となっていて、これは農⽔省の方から聞いたのではありませんが、どうも「この数字は国産米との価格差を逆算して決めている」ということです。この時点で国産米(平均4,000円)より54%以上高額になっています。関税が価格の23%を占めており、自動⾞のトランプ関税とあまり変わらないわけです。米が高騰する前は、関税は64%(現在23%)、流通コスト29%(現在63%)だったので、全体の価格が上昇したため、関税の⽐率は相対的に小さくなり、流通コストが異常に大きく⾒える状況です。
2.⾒えない輸⼊制限(MA制度の不思議な⼒学)
※MA米︓ミニマム・アクセス米は、「海外から輸入するよう求められた最低限度の量の米」のこと。
既述したように、日本はWTO協定で年間77万トンの米輸入を義務付けられていますが、実態は︓
・政府管理分(99.5%)︓備蓄⽤・加⼯⽤に転⽤
・⺠間流通分(0.05%)︓中華食材店など限定販売
輸入枠を超えると関税が778%に跳ね上がる「⼆段階関税制度」が⺠間参入を阻んでおり、JETRO報告書では「制度設計が意図的に市場流通を抑制している」と分析しています。
また、非関税障壁の実態として、品質検査の隠れたコストが指摘されています。
中国産米が日本に入るためには、以下のコストがかかるのです。
1.JAS 規格検査(1検体25,000円)
2.残留農薬検査(300項目/1ロット15万円)
3.放射能検査(1検体5万円)ただし、2025年の展望として、規制緩和の兆しがあります。
- EPA協定交渉︓関税引き下げの可能性
- デジタル通関︓検査コスト30%削減⾒込み
- 加⼯⽤特例︓関税292円→180円に減額検討
また、消費者も意識の変化が⾒えてきました。
20代の34%が「国産より安ければ中国産も選択」してもよい。
五常米使⽤の外食チェーン店「谷田稻香」は、日本人からも高い評価
※【コラム】中国の五常大米が美味過ぎる件、明明東京@中国を鉄道で旅する日本人
https://note.com/chotelsommelier/n/n5469dcb71d68したがって、今後は五常大米など「プレミアム米」に特化すれば、日本にも受け入れられる可能性は高いと思います。しかし、トランプ大統領が米国での製造業の回帰を宣⾔して、関税を上げている様⼦をみれば、農⽔省が日本国産米を守るために341円/kgという関税で日本農業を保護しているのは理解できます。ただ、ここまでコメ不⾜やコメ価格の高騰で、米騒動が起きてくる事態になれば、この制度の壁を市場の⼒が徐々に圧⼒を加えていくはずです。
以上