中国商標の「無効宣告請求」について

アパレルメーカーですが、当社の商標が、知らない間に中国で登録されていることがわかりました。以前、解説いただいた「三年間不使⽤取消審判」請求は、登録から3年経たないと申請できないと理解しています。(※「抜け駆け出願、横取り出願、冒認出願…の違い」(https://chinawork.co.jp/fqa20250129/)参照。)
当社の商標は抜け駆け登録をされてから、まだ1年ほどしか経っていません。何か対処⽅法はありますか︖

 抜け駆け出願された商標が、登録から3年未満の場合、貴社が取ることのできる法的措置に「無効宣告請求」があります。以下、実際に日本企業の商標が抜け駆け出願(冒認出願)されていたケースで説明します。

1.今回の初歩的な調査による分析結果
貴社は日本ですでに先⾏登録があり、商標権や商号権、または先⾏使⽤証拠があれば、これを先⾏権利として「無効宣告請求」を⾏うことができます。
(1)商標出願⼈との関係︓
 中国「商標法」第15条によれば、授権なしに代理⼈または代表者が⾃⼰の名義で被代理⼈または被代表者の商標を登録した場合、被代理⼈側が異議を申し⽴てれば、登録不許可かつ使⽤禁⽌となります。
 同一または類似商品において、他者が先使⽤している未登録商標と同一/類似の商標を出願し、出願⼈が当該他者と契約関係・取引関係その他の関係を有しつつ、その商標の存在を認識していた場合、他者が異議を申し⽴てれば登録が認められません。
 貴社と商標不正登録者との間に業務関係があり、知り合いである証拠(メール往信、注文書、請求書、契約書等で証明可能)が確認できれば、無効宣告の成功率が大きく向上します。以下の説明の通り、今回の商標不正登録者は、同じ業界の中国国内製造業者であり、貴社とも関係を有している可能性があります。

(2)出願者(商標不正登録者)の悪意︓
 「商標法」第4条に基づき、使⽤目的のない悪意ある商標出願は拒絶されます。当該出願者は合計25件の商標を出願しており、いずれも海外ファッションブランドの不正登録です。これは企業の通常の事業範囲を超えており、中国の先願制度の隙間を悪⽤した明⽩な悪意が認められます。

(3)商標権侵害の主張︓
 一部商標については、相手⽅の商号権侵害を主張できます。

2.「無効宣告請求」の手続きについて
 無効宣告は比較的複雑な法的手続きですが、主に以下の2段階に分かれています。

(1)申請段階︓
① 無効宣告に必要な書類(会社謄本や申請書等)を準備する。
② 専門家が事案を理解し、無効宣告申請文を作成する。
③ 国家知識産権局(CNIPA)に無効宣告申請を提出する。

(2)証拠補充段階︓
① 専門家が事案に基づき証拠収集の指針を作成し、貴社に3ヶ月以内に証拠を収集するよう依頼する。
② 顧客が提供した証拠を確認し、分類して整理する。
③ 弁護⼠が証拠資料に基づいて証拠補充文を作成する。
④ 補充文と証拠資料を一緒に中国の国家知識産権局に提出する。
⑤ 国家知識産権局は約3ヶ月で無効宣告の受理通知書を発⾏する。
⑥ 無効宣告の審決が確定するまでは、およそ11か月かかる。

 商標の登録審査期間は、無効宣告審査期間より短いため、貴社は無効宣告申請を提出する際に、同時に新規の出願申請を⾏い、早い申請日時を確保して、他者による再登録を防ぐ必要があります。ただし、この場合、貴社の出願申請は、冒認出願の商標が存在しているため、一時的に拒絶されることになります。その後、拒絶決定に対する再審査申請を⾏い、無効宣告の結果を待ちます。これは三年間不使⽤取消審判請求でも、他社の再申請を防ぐために⾏う新規
出願と同じ理由です。無効宣告が成功した後に、新たに出願申請を提出することもできます。その場合は拒絶決定に対する再審査申請の費⽤は発生しませんが、他者が再度出願申請して登録するリスクを完全に回避することはできません。

※実際のケースでご相談いただければ、初歩的な調査を含めて、対策を分析します。

  
以上