中国特許におけるパリルート出願と PCT ルート出願について

いま日本で特許を出願していますが、同時に中国でも同じ特許を出願して登録できたらと考えています。中国は何か特別な手続きが必要でしょうか。

 外国出願⼈が中国で特許出願を⾏う際、パリ優先権を主張して出願する⽅法(以下、「パリルート出願」という。)、PCT 出願(国際特許出願)の中国国内段階への移⾏によって中国に出願する(以下、「PCT ルート出願」という。)⽅法がある。パリルート出願と PCT ルート出願の手続き上の相違点は、以下のとおりである。

1.出願方法
 パリルート出願は、最初の基礎出願(外国出願)から 12 ヶ⽉以内に中国で直接特許出願を⾏う手続き。特定の国で迅速に権利化を目指す場合に適している。特徴として、優先権の主張が可能(基礎出願から 12 ヶ⽉以内)。基礎出願に依拠した中国国内の直接出願。
 PCT ルート出願は、国際出願日から 30 ヶ⽉以内に中国で国内段階に移⾏する手続き。複数国での特許取得を視野に入れている場合に適している。出願が国際段階(WIPO)を経ていることや国際出願日を基準として、複数国での特許取得が⼀括で管理できるのが特徴だ。

2. 必要書類と翻訳要件
 パリルート出願の必要書類は、中国語の明細書、請求項、要約書。また、基礎出願の優先権証明書(優先権を主張する場合)。優先権証明書の中国語翻訳。PCT ルート出願は、PCT 国際出願番号、国際出願の中国語翻訳(明細書、請求項、要約書など)、国際調査報告や⾒解書(必要に応じて)。国際出願の全書類を中国語に翻訳する必要がある。

■手続きの複雑さ
 パリルートは手続きがシンプルで翻訳や提出書類の範囲が比較的少ないため費用も抑えられるが、⼀⽅の PCTルートは国際段階の費用(国際出願料など)が発⽣する。中国国内移⾏時に必要な翻訳や追加手続きが多く、費用が高くなりがち。
 手続きは、パリルートは中国で直接出願するため、審査開始までの時間が短く、比較的早く特許権を取得できる可能性が高い。⼀⽅の PCT ルートは、国際段階を経てから国内移⾏するため、手続き全体が遅れる可能性がある。ただし、国際調査報告や⾒解書を活用できる点で利便性がある。

 留意事項としては、中国で特許⼜は実用新案を出願する際、誤訳訂正の観点からみれば、PCT ルート出願を利用した⽅が、万が⼀、誤訳が発⽣した場合に誤訳訂正のチャンスが保証されているため、パリルート出願に比べてメリットがある。⼀⽅、費用からみると、PCT ルート出願の場合、PCT 出願自体にも費用が発⽣するため、出願する予定の国が少ないほど出願費用は割高になる。従って、出願する予定の国が少ない場合はパリルート出願を利用した⽅が良いと⾔える。

 
以上