米国、中国製 EV や半導体への関税大幅に引き上げ

アメリカ政府が、中国製 EV や半導体への関税大幅に引き上げましたが、その状況や背景のポイントを教えてください。

 アメリカ政府は 14 日、米国は 1974 年通商法 301 条に基づき、電気⾃動⾞(EV)や半導体、バッテリー、鉄鋼など、中国からのさまざまな輸入品への関税の大幅引き上げを発表しました。以下に、各種報道から現状や背景を整理してみます。

■アメリカの打ち出した政策
・中国製の EV には現⾏の 25%の 4 倍となる 100%の関税を課す。
・太陽電池への関税は現⾏の 25%を倍に引き上げる。
・EV ⽤リチウム電池への関税を今年中に現⾏の 7.5%から 25%に引き上げる。2026 年までにすべてのリチウム電池に新関税が適⽤される。
・⼈⼯呼吸器やフェイスマスクといった医療製品、鉄鋼やアルミニウム製品にも関税を課す。現⾏の 0〜7.5%を今年25%に引き上げる。
・現在課せられていない重要鉱物への関税は 25%とする。
・半導体への関税は 2025 年に現⾏の 2 倍の 50%に引き上げる。

■ホワイトハウスの説明
 「中国の不公正な貿易慣⾏」、特に横⾏する「知的財産の窃盗」と「意図的に価格が抑えられている輸出品を世界市場に氾濫させる」慣⾏を抑制するために必要な措置だ。
 関税に関しては、米通商代表部(USTR)が「綿密な⾒直し」を⾏ってきた。バイデン政権が「これまでになく多額の投資」を⾏っている「戦略的な分野に慎重に的を絞った」。
 新たな関税は、数年にわたって繰り広げられてきた米中貿易戦争における最新の動きとなる。ここ数カ⽉、消費財や電⼦機器、鉄鋼・建設、バッテリー、ソーラーパネルといった主要分野における中国製品の供給過剰が特に懸念を引き起こしている。中国製品の世界貿易⿊字は1兆ドルに迫るほど急増しており、米国や欧州との緊張をあおっている。
 欧米の首脳らは⾃国のマーケットが安価な輸出品に押されることに加え、中国が重要なサプライチェーンを掌握することへの国家安全保障上の懸念や、脱炭素につながる投資や経済の脱炭素化と気候変動への取り組みが中国によって妨げられるのではないかとの憂慮を示している。

■中国政府の反応
 中国政府は、⻄側諸国を保護主義だと非難している。⾃国で余剰となっている製品を世界市場にダンピングすることが他の経済にとって脅威となっているという考え⽅に異議を唱え、⻄側諸国を保護主義だと非難。
 米国政府の発表に先⽴ち、中国外務省の汪⽂斌報道官は14日、「中国は世界貿易機関(WTO)のルールに違反する⼀⽅的な関税の賦課に反対し、正当な権利を守るために必要なすべての⾏動を取る」と記者団に語った。
 商務部は、中国は⾃国の権利と利益を守るために断固とした措置を取ると述べ、バイデン米政権に「違反⾏為」を正すよう強く求めた。

■欧米アナリストたちの指摘
・アメリカはすでに中国製 EV に大きな関税をかけており、国内での売り上げはごくわずか。これらの関税は厳しい選挙の年に票を集めるのが目的。
・今年 11 ⽉の大統領選でバイデン⽒と戦う⾒通しのドナルド・トランプ前大統領は、ここ数カ⽉、バイデン⽒の EV 支援がアメリカの⾃動⾞産業を「殺す」ものだと批判してきた。今回の動きは、不公正な貿易慣⾏を理由に、トランプ政権下でアメリカが中国製品に課した関税を大幅に拡大するものだ。
・バイデン政権がトランプ政権時代の関税を再検討した際、政府には 1500 件近くのコメントが寄せられた。その大半は企業経営者からのもので、関税が日常的なアメリカ⼈の物価を押し上げていると主張し、関税撤廃を求める内容だった。
・しかしインフレが⻑引き、支持率が低下している中でさえ、バイデン⽒はこれらの関税を維持し、新たな領域にまで広げる決定を⾏った。これは、⻑年グローバルな貿易の利点を擁護してきたアメリカの⺠主・共和両党が、通商に関する⾒解を劇的に変化させたことを物語っている。
・ホワイトハウスは、今回の関税は対象を絞っており、インフレを進めるものではないとして、トランプ政権とのアプローチの違いを強調している。
・トランプ⽒はまた、バイデン⽒が EV を推進することで、アメリカの米⾃動⾞企業を破壊すると主張している。11 ⽉の大統領選で鍵となるミシガン州などでは、⾃動⾞メーカーが大きな雇⽤主となっている。
・バイデン⽒もトランプ⽒も貿易障壁を引き上げ、アメリカの産業の競争⼒を実際に⾼められる政策を模索するのではなく」、内政ばかりを⾒るという「同じ道をたどっている。
・バイデン政権の戦略としての関税推進策は、現政権にとって政治的に重要なセクターを保護するための遠回しの表現。こうした政策は、何が最も経済的に理にかなっているか、何がアメリカの消費者にとって最も⼿に届きやすいかよりも、政治経済上の計算に終始している。

■欧州に波及するのか
 EV の関税引き上げは、実際には最小限の効果しか生まないかもしれないが、産業界は欧州が同様の段階を踏むかどうかが注目されている。欧州連合(EU)とイギリスでは、EV の普及を遅らせる危険をおかしてでも、中国製 EV の輸入を抑制するかの議論が⾏われている。「アメリカへの EV 輸入は比較的少ないことを踏まえると、次に欧州で何が起きるかの⽅が興味深いだろう」

以上