RCEP 協定に伴う「特定原産地証明書」の入手の仕方(その 1)

当社は日本から小型ポンプを中国に輸出していますが、上海の取引先中国企業から、RCEP で製品の関税が下がるので、RCEP「特定原産地証明書」をもらうよう依頼がありました。本当に RCEP 協定で関税が下がるのか、また、どのように確認し、どうやって入手すればよいのか教えてください。

 RCEP 協定は、本コーナーでも何度か取り上げています。2022 年 1 月 1 日に、日本・中国・韓国・ASEAN10 ヵ国に、オーストラリアとニュージーランドを加えた 15 カ国について発⾏された、⼯業製品や農⽔産品の関税が段階的に撤廃される⾃由貿易の協定のことです。RCEP 協定は、日本にとって 19 番目の EPA(経済連携協定)となり、中国・韓国が含まれる初の EPA となります。EPA とは、特定の国や地域同⼠での貿易や投資を促進するため、主に「輸入にかかる関税」の減免を約束する「条約」です。関税減免の恩恵を受けるのは「輸入する者」であり、協定が定めた「特定原産地証明書」などを輸入通関時に輸入地の税関へ提出する必要があります。

 中国では政府が RCEP を利⽤するよう国内企業に PR していますが、RCEP 協定には米国が参加していないため、日本は、積極的に PR しにくい側面があるようです。貴社は中国企業の RCEP「特定原産地証明書」の要求で気が付きましたが、この関税メリットを知らない日本企業も多いかと思います。中国の RCEP 協定については、ジェトロで以下の通り解説しているので参考にしてください。
 発効から1年、中国ではRCEP協定の利用が拡大 | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ (jetro.go.jp)

 では、この RCEP で利⽤する「特定原産地証明書」はどのように入手すればよいのかを説明します。
 通常の輸出に使う「原産地証明書」であれば、最寄りの商⼯会議所で入手できますが、RCEP「特定原産地証明書」の場合は、日本商⼯会議所の「特定原産地証明書 発給システムを利⽤することになります。ただし、その前の手続きが少々煩雑で、苦慮する企業も多いことかと思います。そこで、概略をわかりやすく解説してみます。

RCEP を活用した「特恵原産地証明書」取得までのステップ
 https://www.jcci.or.jp/gensanchi/rcep.html

 まず、ステップ1では、HS コードを確認します。HSコードとは、「商品の名称及び分類についての統⼀システムに関する国際条約」に基づいて品目毎に定められているコードで、「関税分類番号」とも呼ばれ、「類(=上2桁)」、「項(=上4桁)」および「号(=上6桁)」にそれ以下の「統計細分(=下3桁)」を加えた番号から成っています。「号(=上6桁)」までは、世界共通ですが、それ以下の「統計細分」は、その桁数も含め国毎に定められている。
 中国の場合、「統計細分」は 4 桁で、合計 10桁の HS 番号となります。中国の HS 番号は、輸出通関で使⽤した HS コードを確認してみてください。


 

 ※次回は、上記ステップ 2 の「EPA 税率の有無や税率を確認する」以降についてです。「世界各国の関税率」(「WorldTariff」)で HS コードごとに EPA 税率の有無や税率を確認する方法を解説します。

以上