合弁会社の出資関係の解消について

 【相談内容】
当社が出資している現地合弁会社は昨年、コロナ禍で工場の稼働が止まっています。その後、現地法人の状況が正常に戻らないため、中国企業との出資関係を解消したいと考えています。そこで、以下のことについて教えてください。
1)出資金を解消するための方法は?
2)当該合弁会社に対しての売掛金と立替金があります。当社は損金処理項目で処理したいと考えています。ただし、合弁相手の中国企業とは関係が悪化しており、どこまで協力してくれるかは難しい状況です。何か対応策はありますか。

1)出資関係(撤退する)を解消する方法は、次の 3 つがある。
① 出資撤退:株主会の決議を経て、A 社は出資から撤退する。
② 株式譲渡:出資持分を他の株主に譲渡するか、譲渡に応じてくれる他の会社を見つける。
③ 会社清算:残余財産は、実際の出資比率に応じて分配される。
上記の 3 つの方法を実行するにはいずれも株主間の合意が必要である。

当該合弁会社の財務状況を分析して株主間交渉の根拠にする場合、次の 2 つの調査方法がある。
① 比較的単純な財務分析:
現在の財務資料をもとに分析を行う。
・直近の財務諸表
・過去の監査報告書
・年次税務申告の財務諸表と所得税确定申告納財務諸表
・前年度の増値税申告書
・直近期及び前年度末の銀行取引明細書、会社信用調査報告書
(できるだけ実態を把握するため、会社信用報告書は中国人民銀行が発行するもの)
・前年度および当年度の勘定残高明細書(最後の詳細レベルまで)
② 比較的正確な財務分析(デューデリジェンス)
デューデリジェンスを通じて、当該合弁会社の資産、負債、利益の構成を整理して分析を行い、既存の財務諸表の真正性を検証する。
 企業に対して全面的なデューデリジェンスを行えば経営判断に役立つが、合弁相手の協力が必要。そのため、株主間の交渉が必要であり、交渉が不調に終わった場合は、裁判所に訴訟を提起することができる。

2)会計事務所に依頼して、以下の損金処理を行う。
・A 社の合弁会社への売掛金〇〇〇〇〇千円
・B 社の合弁会社への立替金〇〇〇〇〇千円
通常、契約で定められた期限を過ぎた場合、裁判所は A 社の勝訴を認めるが、その場合 2 つの可能性がある。
① 当該合弁会社は裁判所の裁定に従って、売掛金と立替金を支払う。
② 当該合弁会社が支払うことができない場合、企業の破産清算を申請して、清算した後の残余資産(従業員の
給料、社会保障費及びその他の関連費用を先に支払った後の残余資産)を、会社の負債総額の割合に応じて返済する。

※当該合弁会社が、出資金や売掛金等を支払うことができない場合、同社の役員に対して、裁判所は高額消費を制限すると同時に、名義の財産を凍結する可能性がある。
交渉の可能性がない場合は、役員の個人資産の移転を避けるため、関連調査を秘密裏に行う必要がある。但し、当該合弁会社の協力がなければ、調査結果の信頼性も問題となる。

 

以上