原発処理⽔の海洋放出に関する中国現地の状況(1)

このたびの福島原発処理⽔の海洋放出問題について、中国の現地ではどのような状況になっているのでしょうか。日本で報道されていることしか分からないので、実際の中国での事情等が分かればありがたいです。

 今月初めに広島県から実際に依頼された内容です。以下、「原発処理⽔に関する中国現地の状況」として先週報告しましたので、その内容を 2 回に分けて掲載させていただきます。

1.福島原発処理⽔の海洋放出問題の流れ
8 月 24 日午後 1 時すぎ、日本の東京電⼒は原発処理⽔の海洋放出開始。
8 月 24 日、中国は「日本産の⽔産物輸入を全面的に停止」を公布。
「海关总署公告 2023 年第 103 号(关于全面暂停进口日本⽔产品的公告)」
http://gdfs.customs.gov.cn/customs/302249/2480148/5274475/index.html
(*香港とマカオは 10 都県の⽔産物輸入を禁止)

8 月 25 日、中国の国家市場監督管理総局は中国国内の⾷品業界の経営者に対し日本産⽔産物の購入や加⼯、スーパーやレストランでの提供を禁じるとし、⽔産物の⾷品安全および⾷塩価格の監督管理を強化する措置を発表した。
主な内容は以下の通り。
 市場監督管理総局は、⾷品安全および価格の監督管理を重視している。これまで⾏ってきた輸入⾷品安全上のリスクに関する厳格な検査のもと、各地の市場監督管理部門に対し、⾷品安全の監督管理を⼀層強化するよう指⽰する。⾷品⽣産事業者には、⾷品安全の法律・法規および輸入⾷品の関連規定を厳格に順守するよう促す。
 また、⾷品⽣産事業者による、日本を原産地とする⽔産物(⾷用⽔⽣動物を含む、以下同)を買い付け、または使用して⾷品を加⼯、調理、販売(ネット販売を含む)することを固く禁ずる。市場で販売される輸入⽔産物の⾷品安全サンプリングとモニタリングを強化し、関連の違法⾏為が発⾒された場合は法に基づき厳格に調査・処分する。
 同時に、市場監督管理総局は各地の⾷塩価格の監督管理を強化し、早期警戒に努める。関連するインターネットプラットフォームとの「直通」メカニズムを整備し、異常な価格変動と違法⾏為に関する情報を適時に把握する。価格の監督管理、法執⾏を強化し、買い占めや売り惜しみ、価格のつり上げに関する情報の捏造(ねつぞう)と拡散などの違法⾏為を厳しく調査し、該当する事案を適時公表する。

8 月 26 日、中国国内での⾷塩の買い占め、中国の SNS で日本の化粧品の不買を呼びかける動きが始まった。影響が⽔産物の輸入禁止以外にも広がる。

8 月 27 日、外務省は東京電⼒福島第 1 原発処理⽔放出を受けて中国で抗議や嫌がらせが相次いでいるとして、中国への渡航や滞在を予定する邦人に注意を呼びかけた。
①外出する際は不用意に日本語を⼤きな声で話さない。
②日本⼤使館や総領事館、日本人学校を訪問時には周囲に細⼼の注意を払う。
③抗議活動に遭遇しても近づかず、スマートフォンでの撮影もしない――と慎重な⾏動を要請した。

8 月 28 日、処理⽔の海洋放出を巡って、中国から日本への迷惑電話が相次ぐ。

8 月 30 日、原発処理⽔の海洋放出開始に伴う中国の反発が、中国人の訪日旅⾏にも影響し始めた。中国メディアは旅⾏のキャンセルを相次ぎ報じた。

中国 SNS で広がる原発処理⽔の情報について
 中国の短⽂投稿サイト「微博(ウェイボ)」で処理⽔関連の情報を調べると、主に日本政府への批判とともに、排出される処理⽔が危険だと主張する情報が拡散されている。そのため、日本製品にマイナスなイメージを持つことが⼼配される。⼀⽅、中国政府の主張に合わない情報発信は厳しく管理されている噂もあるので、中国国内で世論を喚起しやすいと⾔われている。こうしたネット世論の醸成が、公衆の反発⾏動に影響を与えているとみられている。

中国国内の日本料理店の反応
 8 月 24 日、中国は正式に日本産の⽔産物輸入全面停止を公布した後、⼀般的な日本料理店(価格が安価)では、消費者がその⾷材が基本的に中国本土から来ていることを知っているため、影響はそれほど⼤きくない。逆に、「日本原産地の⾷材」 がセールスポイントとする⾼級日本料理店は、苦労している。
 上海や北京の⾼級日本料理店では、中国が日本からの海産物に対して放射性物質の全量検査を始めた先月から店で使用する⽔産物を日本産以外のものに切り替えた。7 月の後半くらいから、中国国産の魚介類の値段が約 10%〜30%値上がりしているという状況で、客数が減少して原価が⾼騰しているという。

 香港政府も 24 日から福島県など 10 の都県産の⽔産物の輸入を停止。この発表を受けて飲⾷店など 100 社で作る香港日本料理店協会は声明で、規制に該当しない地域の⽔産品に関しては今まで通り、提供し続けると宣⾔。

                                                  (次号に続く)         


 

以上