中国子会社の閉鎖を証明する登記抹消資料の取得について(2)

以前、中国に設⽴した 100%独資子会社の閉鎖を証明する登記抹消の公的な資料がないため、⽇本国内での税務上必要な⼿続きが進めることができません。しかし、今は亡くなっている先代が設⽴から閉鎖まで⾏っていたので、現在社内で保有している情報や書類が乏しく、対応に苦慮しています。登記抹消の証明書を取得するために中国でどのような⼿続きが必要となるのでしょうか。(前回に続いて回答します)

1.税務関連について︓
■中国の税務局からの指導
「嘉善●●精密有限公司」(以下、「●●精密」という)の抹消⼿続きについて、税務局から以下の点を指摘されました。

(1)抹消⼿続きの方法
①異常企業から正常企業への変更⼿続きを実施する。
②2014 年から 2021 年までの7年間の税務申告書を提出し、税⾦が発⽣した場合は納税する。
※上記①と②の⼿続きは、同⽇に⾏う必要があります。

2.登記関連について
浙江省嘉善市の環保科技園⼯商分局で、「●●精密」の管轄は「市⾏政服務中⼼⼯商局外資担当窓口」となることが確認できました。
■市⾏政服務中⼼⼯商局外資担当窓口︓
この地域で企業登記を管理している組織です。担当者に事情を説明し、データベースから「●●精密」の現状を調べてもらったところ、データベースにアクセスした時に「リスク警告」が表示され、この「リスク警告」を解除しないと抹消⼿続きができないことを指摘されました。
「リスク警告」を解除された場合、抹消⼿続きは以下の通りです。

①「嘉善●●精密有限公司」の株主(⽇本菊池)会社の登記簿謄本の取得 ※登記簿謄本は外務省及び⽇本の中国⼤使館の認証が必要
②代表取締役のパスポートのコピー(「嘉善●●精密有限公司」の株主(⽇本●●)会社の新しい代表取締役)
③上記の書類の中文訳
■市⼯商局風険監管科(リスク監督管理課)︓
担当者に事情を説明し、データベースから「●●精密」の現状を調べたところ、「リスク警告」となっていることが確認できました。「リスク警告」とは 3 年連続で⼯商年度検査(確定申告)を申告せず、営業許可証を取消された企業であることを指しています。リスク監督管理課課⻑は、「●●精密」の事情に同情してくれましたが、「リスク警告」になってしまった以上、解除することができず、「会社を清算しなければならない」との指摘を受けました。

3.まとめ
税務分局と⼯商局から確認した内容によって、以下の状況が確認できました。
①税務登記の抹消について
異常企業から正常企業への変更⼿続きと税務登記の抹消⼿続きを同⽇に実施すれば、税務登記が抹消できる。⼿続きが完了すると「清税証明」(税⾦完納証明)を発⾏される。
②⼯商登記の抹消について
「リスク警告」を解除できないため、営業許可証を復活させることができないので、現地法⼈を抹消するしか方法がない。
③銀⾏口座の抹消について
銀⾏口座を抹消するのに営業許可証、代表印、銀⾏カード、銀⾏担当者登録番号…等が必要となる。しかし、これらの書類や情報がないため、銀⾏口座の抹消⼿続きができない。そのため、登記抹消の証明が取得できるよう当該地域の政府部門に協⼒を要請することにした。

――以上の調査結果に従って処理を⾏い、無事に登記抹消を完了し、それを証明する資料を取得することができました。