RCEP(アールセップ)協定の主な概要と影響(その2)

RCEP(アールセップ)協定が 2022 年 1 月 1 日に発効したと報道されていますが、日本と中国の関係に何か変化や影響はありますか? (前回に続き)

<規定されたルール>
①物品の貿易
・内国の課税及び規則に関して、他の締約国の産品を国内産品と同等に取り扱う(内国⺠待遇)義務を規定する。
・輸入許可手続について、新たな手続を採用する際や既存の手続を修正する際には、一定期間内に通報を行う義務を規定した上で、その通報項目等を規定する。

②原産地規則
・ある産品が特恵待遇の対象となる原産品となるためには、当該産品が、本協定の締約国において、「完全に得られ、又は生産される(動植物、鉱物資源等)」、「締約国からの原材料のみから生産される」、又は「締約国以外からの非原産材料を使用している場合には、附属書 3A(品目別規則)に定められた要件を満たす必要がある。
・各締約国は、産品の生産に当たって他の締約国の原産材料を使用した場合、当該他の締約国の原産材料を自国の原産材料となすこと(累積)を規定し、RCEP 域内のサプライチェーン構築を支援する。また、本協定が全ての署名国について発効した場合には、他の締約国での生産行為や付加される価値も累積の対象に含めることを検討の上で本協定の見直しを行う義務を規定する。
・原産地証明について、全ての締約国において、第三者証明制度及び認定された輸出者による自己申告制度を採用しているほか、後発開発途上国も含め、各締約国について協定が発効した日から一定期間内に輸出者又は生産者による自己申告制度を導入する義務を規定する。また、我が国への輸入については、その協定発効日から輸入者による自己申告制度を導入できる旨規定する。

③税関手続及び貿易円滑化
・関税法令の一貫性及び透明性の確保、通関の迅速化・税関手続の簡素化ルールの策定、輸出入・通過手続等の透明性の確保を規定。
・関税分類等の事前教示制度について、必要な情報の受領後、可能な限り、90 日以内に行う義務や、教示内容を、少なくとも 3 年間有効なものとし、根拠法令等の変更により、教示の内容に変更が生じる場合には書面で通知する義務を規定。
・可能な限り、物品が到着し、かつ、通関に必要な全ての情報が提出された後 48 時間以内に物品の通関を許可する手続を採用し、又は維持する義務を規定。

④貿易上の救済
・関税の引き下げ、撤廃の結果として、特定産品の輸入が増加し、当該締約国の国内産業に対する重大な損害又はそのおそれを引き起こしている場合に、当該産品に対し、関税の更なる引下げの停止又は関税の引上げを一時的に(原則として3年間)行うことができる(経過的 RCEP セーフガード措置)旨を規定。
・ダンピング防止税及び相殺関税については、1994 年のガット第 6 条の規定、ダンピング防止協定及び補助金及び相殺措置に関する協定に基づく権利及び義務を確認した上で、調査手続の透明性及び手続の正当性を確保するため、現地調査の事前通知期間や重要な事実の開示期間に関する努力義務等を規定。

⑤サービスの貿易
・内国⺠待遇義務に関して、附属書Ⅱ(サービスに関する特定の約束に係る表)、附属書Ⅲ(サービス及び投資に関する留保及び適合しない措置に係る表)に規定する。

⑥知的財産
・知的財産権の保護に関する、一層の経済的統合・協力を促進する。
・著作権及び関連する権利、商標、地理的表示、意匠、特許等を対象に、知的財産権の取得や行使など、WTO 協定の知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS 協定)を上回る保護等を規定する。
・TRIPS 協定を上回る保護として、具体的には、「広く認識されている商標であることを決定するための条件として、自国又は他国で商標として登録されていること等を要求することを禁止する義務」、「自国の法令に従い、商標の登録の出願が悪意で行われたものである場合に、自国の権限のある当局が当該出願を拒絶し、又は当該登録を取り消す権限を有することを定める義務」、「物品の一部に具体化された意匠又は物品の全体との関係において、当該物品の一部について特別に考慮された意匠が意匠としての保護の対象となることの確認」等について規定。知的財産権の行使については、「⺠事上の司法手続において司法当局が、知的財産権の侵害行為から生じた損害賠償の額を決定するに当たり、権利者が提示する合理的な価値の評価を考慮し、侵害者に対し損害賠償を支払うよう命じる権限を有すること」、「著作権侵害物品及び不正商標商品の輸入を権限のある当局が職権で差し止めることができる手続を採用し、又は維持すること」等を規定する。

以上