商標が「抜け駆け出願」(冒認出願)されていた場合

当社の商標の「Dr.sakuraba」が、中国ですでに登録されていることがわかりました。誰が何の目的で登録したのかわかりませんが、商標を取り戻すことは可能でしょうか。

 昨年の相談だった。いわゆる、「抜け駆け出願」、「横取り出願」、「冒認(ぼうにん)出願」と言われるものだ。中国語では、他人の商標やブランドを故意に横取りする目的で登録することを「抢注 qiǎngzhù(搶注)」といい、「恶意注册 Èyì zhùcè(悪意注冊)」は、特に悪意のある登録全般を指す。

今回のケースを弊社が現地スタッフを使って調べてみた。登録状況は以下の通り。

「Dr.sakuraba」商標の中国大陸における登録状況

 上記の通り、広州市●●●貿易有限公司という会社が 2020 年 5 月 28 日に冒認出願を行い、2020 年 12 月20 日に登録に成功していた。したがって、2023 年 12 月 20 日で 3 年間が経っている。
 中国現地で中国の各種プラットフォームでこの商標を検索しましたが、いずれも貴社が商標を使用したものであり、広州市●●●貿易の使用痕跡は見つからなかった。
 広州市●●●貿易について、登記情報を現地で入手、同社の商標に関する状況について、弊社現地法人のスタッフと現地提携先の特許事務所が調べたところ、以下の状況が確認できた。

 ※2022 年、広州市●●●貿易(被告)は●●品牌管理有限公司(原告)との間で人民法院にて商標を巡る紛争を起こした。
 事件番号は(2022)広東 0104 民初●●792 号と(2023)広東 0104 執●●849 号。
 後に広州市●●●貿易(被告)が敗訴し、高額消費ができなくなる「消費制限」措置の判決が下された。

 登記情報と以下のスクリーンショットをご覧いただくとわかるが、広州市●●●貿易は 4 つの商標を中国で登録している。貴社の商標の他に、日本の商標が二つ、米国商標の商標1つがあった。
 これらの商標を中国の各サイトで検索したところ、この会社の使用跡は発見されず、広州市●●●貿易が外国企業の商標を冒認出願した行為は明らかである。

 2022 年の商標権侵害紛争のほか、2023 年 10 月 23 日、広州●●科技有限公司も広州市●●●貿易有限公司に対し、商標侵害の民事訴訟を起こし、広州市頓奈貿易の商標登録行為は極めて悪質であることが明らかになっている。

■「三年間不使用取消」について
 以下の通り、中国商標法第 49 条の規定により、正当な理由がなく 3 年間使用されなかった場合、商標局に当該登録商標の取り消しを申請することができる。
 商標局は出願を受けた日から 9 ヶ月以内に決定しなければならないーーと規定されている。
※ジェトロの中国商標法日本語訳(第四十九条)
20191101law_2_jp.pdf (jetro.go.jp)
第四十九条二項
登録商標が使用許可された商品の通用名となり、又は正当な理由なく継続して3年間使用しなかったときは、如何なる単位(組織)又は個人も、商標局に当該登録商標の取消を請求することができる。商標局は、請求を受領した日から9ヶ月以内に決定を行わなければならない。特別な事情があり、延⾧することが必要な場合、国務院工商行政管理部門の許可を得て、3ヶ月間延⾧することができる。

 広州市●●●貿易は、2020 年4月 10 日に●●(女性)という経営者が設立した会社だが、会社設立直後の2020 年 4 月 27 日に「Dr.sakuraba」を出願している。おそらく、意図的に海外商標の冒認出願を行っている悪質な業者だと思われる。中国現地の専門家は、広州市●●●貿易に対し、三年間不使用取消申請を行えば、かなりの高い確率で同商標の取消しに成功すると見ている。

――次回は、冒認出願された商標に対する「三年間不使用取消」の具体的な申請について説明します。

 
以上