中国EVメーカーBYD、日本市場に軽⾃動⾞を投入
- BYDが、日本市場でEV軽⾃動⾞を販売すると聞きました。同社はトランプ関税で米国に輸出できないから日本で展開しようとしているのでしょうか。日本市場で中国の軽⾃動⾞が売れるとは思えません。BYDの狙いは何でしょうか︖
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BYDは現在、米国市場への電気⾃動⾞(EV)の輸出を⾏っておらず、乗⽤⾞の販売も⾏っていません。これは、米国政府による中国製EVへの高関税や政治的な障壁が主な要因です。バイデン政権が導入した中国製EVへの100%の追加関税や、トランプ前⼤統領が提案したメキシコ経由の中国製EVへの関税強化などが、BYDの米国進出を難しくしています。 では、BYDの軽⾃動⾞展開について、整理してみます。
■BYD、日本市場での軽⾃動⾞を投入
中国の電気⾃動⾞(EV)メーカーであるBYDは、2026年後半に日本市場向けの軽⾃動⾞規格に準拠したEVを投入する計画を発表しました。この新型軽EVは、日本の軽⾃動⾞規格(全⻑3,400mm以下、全幅1,480mm以下)に合わせて専⽤設計され、日本市場に特化したモデルとなる予定です。BYDオートジャパンは、軽⾃動⾞ビジネスに豊富な経験を持つ⼈材の募集も開始しており、日本市場への本格的な参入を進めています。 日本市場での反応は複雑です。一部の消費者は、BYDの価格競争⼒や技術⼒に注目していますが、他⽅で中国製品に対する品質や安全性への懸念も根強い。また、日本政府の補助⾦制度の変更により、海外メーカーのEVに対する支援が減少し、BYDの販売戦略にも影響を与えています。BYD 小型車「海鸥(シーガル)」 ■BYDの日本市場での業績
BYDは2023年に日本市場に参入し、ATTO 3、DOLPHIN、SEALの3⾞種を投入しました。2024年には、日本国内で2,223台のEVを販売し、前年から54%の増加を記録。これは、トヨタのEV販売台数を上回る結果であり、BYDの日本市場での存在感が高まっていることを示しています。
しかし、全体的な販売台数は依然として限定的であり、日本市場でのEV普及率の低さや充電インフラの不⾜、消費者のEVに対する認識などが課題となっています。BYDは、これらの課題に対応するため、販売ネットワークの拡充や充電インフラの整備、マーケティング活動の強化を進めています。
■BYDの⾃動⾞の強みと日本⾞との違い
BYDの強みは、電池やモーターなどの主要部品を内製化し、コスト削減と品質向上を実現している点にあります。また、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採⽤した「ブレードバッテリー」は、熱安定性が高く発火しにくい特徴を持ち、安全性とコストパフォーマンスの向上に寄与しています。
一⽅、日本⾞は信頼性や耐久性に定評がありますが、EV分野ではBYDに比べて出遅れています。BYDは、価格競争⼒や技術⼒を武器に、日本市場でのシェア拡⼤を目指しています。BYDが日本市場に軽EVを投入する主な狙いは、以下のような戦略的な意図が考えられます︓
1.日本市場の主要セグメントへの参入
軽⾃動⾞は日本国内の新⾞販売台数の約4割を占める主要市場であり、これまで海外メーカーが参入しにくい「非関税障壁」とされてきた領域です。BYDはこの市場に特化した専⽤設計の軽EVを開発することで、日本市場での存在感を⼤幅に拡⼤しようとしています。2.価格競争⼒による市場シェア獲得
BYDはバッテリーから⾞両まで⾃社で開発・⽣産する垂直統合型のビジネスモデルを持ち、コスト競争⼒が非常に強いことが特徴です。既存の国産軽EV(例︓日産サクラ、三菱eKクロスEV)と比べて、より低価格かつ高性能なモデルを投入することで、価格敏感層を取り込むことを狙っています。3.EV普及の加速とブランド認知向上
日本ではEVの普及が遅れており、BYDは高級⾞戦略から⼩型⾞戦略へ転換することで、より多くの消費者にアプローチすることを目指しています。軽EVは日常使いに適した⾞種であり、EVの一般化を促進する役割も期待されています。4.商⽤⾞市場とのシナジー効果
BYDは乗⽤⾞だけでなく、EVバスやEVトラックの展開も強化しており、軽EVを含めた総合的なEVソリューションを提供することで、日本市場での事業基盤を固めようとしています。5.日本専⽤設計による現地適応
これまでBYDの日本展開は輸入⾞ベースでしたが、軽EVは日本独⾃の規格(全⻑3.4m以下、全幅1.48m以下)に完全準拠した専⽤プラットフォームで開発されます。これにより、日本市場のニーズに合致した製品を提供し、信頼性向上を図っています。以上、BYDの軽EV参入は、単なる新⾞種の追加ではなく、日本市場におけるEV普及をリードし、国産メーカーが独占してきた軽⾃動⾞市場に本格的に⾷い込むための戦略的な動きと⾔えます。2026年後半の発売に向け、価格・性能・販売網の整備が注目されます。
※参考資料
1. BYD、日本専⽤の軽EVを26年投入 国内4割市場狙う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC172MS0X10C25A4000000/
2. BYDが日本専⽤モデルの軽EVを発売へ/「庶⺠の電気⾃動⾞」に期待する価格や性能は︖
https://blog.evsmart.net/ev-news/byd-japan-exclusive-kei-ev-launch-price-performance-expectations/
3. 中国BYD、日本市場に低価格の軽EVを投入へ[新聞ウォッチ]
https://response.jp/article/2025/04/22/394783.html ・・・他。
以上