日本語のロゴ商標が原材料と指摘されて拒絶されたケース

「うなぎ屋の元気サブレ(仮称)」いう商標を中国で出願しようと検討しています。日本語なので、登録は可能だと認識していますが、問題はないでしょうか。

 お菓子の「第 30 類」の区分ということで、ご説明します。最近、似たようなケースで、日本語の商標が中国商標局に拒絶されました。その状況をご報告するとともに、弊社及び現地の専門家の間で検討、分析した結果と、対応策をお伝えします。
 まず、下記の商標局の拒絶通知書の翻訳文を以下の通りお知らせします。

                        「商標拒絶通知書」
 審査を経て、『商標法』第 10 条第 1 款第(7)項、第 30条、『商標法実施条例』第 21 条の規定に基づき、わが局は上述の商標登録申請を拒絶することを決定した。その理由は以下の通りである︓

 当該マークに含まれる「●●●」は、指定された商品に使用され、公衆が商品の原材料などの特徴に誤認を生じやすく、商標として使用してはならない。「商標法」第 34 条の規定によると、商標登録出願人は本拒絶決定に不服があれば、本通知を受け取った日から 15 日以内に国家知的財産権局に再審を申請することができる。ここにお知らせします。

 すなわち、わかりやすく、例えていうと、ご質問の「うなぎ屋の元気サブレ」の“うなぎ”を商標として登録されると、商品の原材料及びその他の特徴について公衆を誤認させるおそれがある、という拒絶理由です。“うなぎ”は中国語で“鳗鱼”(mányú)といいますが、中国で、日本語で原材料を使用しても問題があるということです。(ただし、審査官の個人的⾒解が入っている可能性もあること、また、実際に拒絶された商標は“うなぎ”ではないので本当に拒絶されるかわかりませんが、その可能性が高いとご理解ください。)

 しかし、現地の知財関係者が困惑していたのは、過去に“うなぎ”で登録されている商標が複数あるということでした。弊社の現地スタッフ及び現地の専門家は、この商標局からの拒絶理由は通常とは異なっていると指摘しています。
 以下に状況を整理してみます。

●類似商標(引証商標)が存在しない。つまり、「うなぎ屋」という商標が、他の商標と類似しているとは考えていない。
●今回、「うなぎ屋の元気サブレ」ロゴは、「意味なし」として申請しています。“うなぎ”は中国では“鳗鱼”ですから、通常は原材料と指摘されにくい。しかし、近年、日本の関連商品が中国に進出していることで、その呼び名が知られるようになり、“うなぎ”という⾔葉を⾒て、中国語の“鳗鱼”のことだとわかる(連想する)ようになった。そのため、原材料が登録される(マークと付ける)と消費者が購入の際に誤認を招くという指摘のようです。

 通常であれば、商標局が他の商標と類似していると判断した場合、拒絶に対する再審査の理由は、類似とされた二つの商標の違いから分析して解説します。しかし今回は、他の商標と類似しているからではありません。拒絶再審の理由としては、商標局に「他の“うなぎ”を含む商標は登録できているのに、なぜ当方の商標は登録できないのか」と反論を提出するしかありません。しかし、審査官はそれを承知の上で今回の拒絶を⾏っているのは明白で、その指摘に対して結果を覆せる可能性は極めて低いと思われます。

■“うなぎ”が原材料であるならば
 今回、原材料として拒絶されたのは、もしこの“うなぎ”が商標で登録されると市場を混乱させるから、ということです。であれば、“うなぎ”は原材料であるがゆえに登録しなくてもロゴマークとして自由に使用できるという理解になります。つまり、“うなぎ”という商標は権利⾏使できないことが、今回の拒絶審査で証明されたことになります。したがって、今後は「うなぎ屋」を使うのは自由ですし、他社も商標として登録することはできません。(例え話なので、実際には自由になるかはわかりませんので、ご理解ください)
■TM マークが使用できる
 中国においても日本と同様に、正式な登録を得て初めて、法的に保護される商標となり、マークを付けることができます。商標登録に成功しなければ、出願された商標は単なるロゴ(マーク)です。
 そのため、逆に TM マークを使用することができます。通常、TM マークはそのロゴが商標として出願中であったり、出願中に拒絶されたり、異議申し⽴てされたりしていることを表しています。商標の出願や再審、異議を申し⽴てには相当の時間がかかるため、商標出願人は早く当該商品を販売、普及させるために、商品に TM マークを使用し、商標を出願したことを他人に知らせるようにします。

 この TM マークの使用は、商標局の許可を得る必要がなく、自分で付けることができます。TM マークを使用しても、法律で保護されるわけではなく、また、他の人も同様または類似の商標を使用することができ、権利侵害にはなりません。
 「うなぎ屋の元気サブレ」に TM マークを付けて使用した場合、商標局は「うなぎ屋の元気サブレ」が他の商標と類似していて拒絶したわけだはないため、類似商標が存在していないと理解できます。
 また、「うなぎ屋の元気サブレ」に TM マークを使用すると、商標出願中であるかのように第三者には⾒えるため、同一または類似の表記は使用されにくい。ただし、もし他者が使用したとしても侵害にはなりません。
 TM マークについての考え方は基本的に日本も中国と同じです。ご不明な点があれば、桜葉コンサルティング(株)に問い合わせてください。


以上