情緒価値(感情的価値)から生み出された市場

中国で「情绪价值」(情緒価値)という言葉が中国で氾濫していると聞きましたが、どういう意味で使われているのでしょうか。

 中国では最近、「情緒価値(感情的価値)」が話題になっており、若者の間で流⾏しています。「感情的価値」とはもともとマーケティング学の概念で、消費者が感じる感情的収益と、コストの差を指しています。特に、「自分を愛する」ことが話題となって注目を集めました。かつて消費の主な目的は、物質的な商品を手に入れることで日々の欲求を満たすことでした。人々の消費水準が全般的に向上するにつれ、多様化した消費ニーズを単一の商品属性で満たすことが難しくなり、「好き、欲しい、必要」が購買につながる決定的な要因となっています。
 この要因で生み出された市場が、「ストレス解消経済」です。

「ストレス解消経済」
 最近、「悩みを忘れることができる」を売り⽂句とした「ストレス解消グッズ」が人気を集めています。例えば、ハンドスピナーが数ヶ月連続で、各大手 EC プラットフォームの人気ランキングのトップになっているほか、フルーツをカットしたり、絨毯洗ったりするショート動画の再生回数が 1 億回を超えたりしています。おもちゃからショート動画に⾄るまで、ストレス解消グッズが今、トレンドとなり、都市の若者の間で流⾏しています。
 ストレス解消グッズの魅⼒とは、若者が追い求めるリラックス体験にあります。主な原因としては生活のリズムが速く、競争のプレッシャーも大きく、なかなか気持ちが休まらないので、頭の中を空っぽにして、気持ちを落ち着かせたいです。ストレス解消グッズを使うと、リラックスして心地よくなり、ストレス解消やイライラ解消の効果はとても高いと言われています。巨大な市場需要が「ストレス解消経済」を生み出しました。天眼査(会社情報調査アプリ)のデータによると、過去 5 年間、「ストレス解消」関連企業の年間登録量は急速に増加しています。電⼦商取引プラットフォームでは、「ストレス解消玩具」、「ストレス解消グッズ」などのキーワードで検索すると、関連商品が 2 万点以上あります。

ストレス解消玩具(もちもち触感)
ハンドスピナー

 今の若者は、自分の心理的欲求を満たしてくれる商品なら、進んで財布のひもを緩めます。盲盒(ブラインドボックス)という日本の「ガチャガチャ」の箱入り版が大人気となりました。中に希少なキャラクターが入っているので、それを入手するためにお⾦をつぎ込み買い続ける人もいます。また、新たなトレーディングカードが続々と現れ、「ウルトラマンカード」や「ポケモンカード」などといった日本発の中国トレーディングカード市場の活気が伝えられました。期待や満足感、幸福感といったポジティブな感情を与えてくれる商品は付加価値が高まり、1 千億元(1 元は約 20.99 円)規模の市場すら数多く誕生しています。
 若者の心理的欲求には、巨大な商機が潜んでおり、⼯夫を凝らして、新しいアイデアに勇気をもってチャレンジすることができれば、その商機を掴むことができるに違いありません。

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