上海ロックダウンで影響を受けている日本企業の状況
- 上海の都市封鎖が 1 ヵ月以上続いていますが、現地日本企業への影響はどうなっていますか。
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今週も引き続き、上海の日系企業の状況をお知らせします。
ロックダウン開始から 40 日が経過した中国・上海市では、現地で操業する日系企業への深刻な影響が明らかになりました。上海に所在する日系企業等により構成している上海日本商工クラブは、5 月 5 日、上海市封鎖管理による事業への影響等に関する実態把握(第 2 回)の結果を公表しました。同クラブは、会員数が 2,331 件(うち、法人会員2,216 社、個人会員 115 人)となっています。
上海日本商工クラブの各業種別部会正副部会⾧、正副分科会⾧、各地域連絡会正副会⾧、事業環境委員会メンバー会社、製造業関連企業のうち 100 社から回答を得ました。
現地から入手した報告書をリンクし、主なポイントを以下にまとめました。
「上海市封鎖管理による事業への影響等に関する実態把握(第 2 回)」http://www.chinawork.co.jp/shanghai_syoukou_club22.0505%20.pdf
◆企業の上海市工場稼働の状況:
・封鎖中には 8 割の企業が工場の操業を停止。
・操業許可を取得している企業は 4 割に満たず、6 割超が申請中あるいは未申請。
・63%の工場が稼働しておらず、稼働 3 割以下の生産も合わせると 9 割に達する。
・操業率回復のためには物流の回復、従業員の確保などが最優先課題。
・操業回復により生産を取り戻そうとしている企業がほとんど。日本拠点での代替生産は 3 割超。◆企業の上海市以外の工場稼働の状況:
・計画通り生産できているのは7社中1社のみ。
・操業率回復のためには物流の回復、サプライヤーの操業回復などが最優先課題。
・操業回復により生産を取り戻そうとしている企業がほとんど。日本拠点、第三国拠点での代替生産は約 3 割。◆物流の状況:
・上海市に関連する国内物流は、8割前後の企業が全く手配できない又は必要量の3割以下しか手配できない。
・特に上海市内の物流は、56%の企業が手配不可能。
・70%の企業では、国際物流の手配が必要量の 3 割に満たない。
・代替利用している港(空港)では寧波、広州、天津など近隣だけでなく広範囲に。◆人流について状況:
・臨時帰国/避難を予定・検討する企業は、駐在員 11%、帯同家族 17%。
・79%の企業が全面在宅勤務、一部泊まり込みも 20%。■企業が直面する困難
◆操業率回復の課題について(自由記述概要)
・閉鎖ループでの対応が必須とされているため、工場内の寮などの設備がないと、本格的な稼働再開は現実的に不可能。
・工業園区と交渉するも、工場内での自主 PCR 検査など課題があり、操業再開申請もできていない。通勤が許可された場合も、従業員の通勤手段確保も課題(女性従業員が多く工場内泊り込みも課題)。
・従業員が泊まり込みで対応することは難しく、自宅からの通勤ができるようにならないと稼働が難しい。
・日本人駐在員、現地従業員とも、移動制限あるいは封鎖により出勤不能。操業許可の条件は、工場内での封
・鎖生活との要求だが、シャワー、ベッド、食事、等々、生活は不可能。1 カ月半以上設備が止まっており、復・帰可能な状態かも判断不能。
・原材料の輸出入、通関の回復、従業員の出勤のための小区への許可手続き、食材確保、従業員の管理が必要。
・工期、遅延賠償、経費補填等々の客先との調整が必要。◆生産の取り戻し方について(自由記述概要)
・100%の取り戻しは困難。既に失注もある。
・注文残の解消及び督促への対応のため、停止前の 150%、200%の稼動が必要となるが、不可能。他社への転注か失注の可能性あり。
・中国内協力工場での代替。
・特に米国系顧客を中心に中国以外拠点での生産体制構築(BCP 対応)も要求されている。再開しても中⾧期的には地政学的リスクにより中国拠点での売上減少が見込まれる。
・ロックダウンにより落ちた消費の回復なしには難しい◆その他物流について(自由記述概要)
≪上海市内物流≫
・車両の手配が困難。
・政府が発行する通行許可証の取得が難しい
・特別通行許可証をもっている輸送会社の確保。
・受け入れ側の高速を降りられない。一般道を走れない。
・上海外高橋に入った貨物の搬出に時間が掛かっている。通行制限に加えトラック運転手不足の問題が大きい(以上は実態把握の中から一部を抜粋)オフィスの封鎖や銀行業務が一部停止していることで、給与支払い、取引先への送金、売掛金の回収ができないなどの事態も発生しており、事業運営に影響を及ぼしている。封鎖管理中の市内移動は難しく、病院や空港に向かう許可を申請することや移動手段の確保が困難との回答も多く寄せられました。また、封鎖管理開始から 1 カ月以上経過しており、食料調達も十分ではないことや終わりが見えない状況から、不安やストレスを感じ、心身への影響を懸念する声も少なくありません。
以上