RCEP（アールセップ）協定の主な概要と影響

　東アジア地域包括的経済連携（RCEP）協定とは、韓国やインドネシアなど国内手続きを残す 5 ヵ国と合わせ 15 ヵ国による自由貿易の協定です。日本や中国など国内手続きを終了した 10 ヵ国で先行して今年 1 月 1 日に発効されました。
　これにより、国内総生産（GDP）の総額で世界の約 3 割を占める巨大な経済圏が誕生することになります。日本は中国や韓国と初めて自由貿易協定（FTA）を結ぶことになり、日本当局の試算によるとRCEP が無かった場合に⽐べ、経済成⻑率は 2.7%程度上昇すると見込まれています。
以下が RCEP の主なポイントとなります。

＜ASEAN 加盟 10 ヵ国＞
ブルネイ、カンボジア、ラオス、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、ミャ ンマー、フィリピン
＜ASEAN の FTA パートナー5 ヵ国＞
オーストラリア、中国、日本、ニュージーランド、韓国（22 年 2 月発効）

＜規定内容＞
物品の貿易（第 2 章）、原産地規則（第 3 章）、税関手続・貿易円滑化（第 4 章）、衛生植物検疫措 置（第 5 章）、任意規格・強制規格及び適合性評価手続（第 6 章）、貿易上の救済（第 7 章）、サービ スの貿易（第 8 章）、自然人の一時的な移動（第 9 章）、投資（第 10 章）、知的財産（第 11 章）、電 子商取引（第 12 章）、競争（第 13 章）、中小企業（第 14 章）、経済協力・技術協力（第 15 章）、政 府調達（第 16 章）、紛争解決（第 19 章）、その他

＜RCEPの合意内容＞
●RCEP では農林水産品や工業製品などへの関税の減免に加え、輸出入の手続きの簡素化、サービス や投資のルールなど。参加国全体での関税の撤廃率は品目数で見ると 91％。
●RCEP が締結されたことによって、今後世界の自由貿易はさらに拡大していく。

＜日本産品の RCEP 協定締約国市場へのアクセス＞
【工業製品】
　　・14 ヵ国か国全体で約 91%の品目の関税撤廃を獲得。
　　・中国及び韓国における無税品目の割合が上昇（中国：8%→86%、韓国：19%→92%）。

（最終的な関税撤廃品目の例）
　自動車部品について、電気自動車用の重要部品（モーターの一部；16 年目又は 21 年目に撤廃、リチ ウムイオン蓄電池の電極・素材の一部；16 年目に撤廃）、ガソリン車用の重要部品（エンジン部品の一 部；11 年目又は 16 年目に撤廃）、カムシャフトの一部（16 年目に撤廃）、エンジン用ポンプの一部 （即時撤廃）等の関税が、中国側で撤廃される。
　 乗用車の一部については、中国が自主的に引き下げた税率（2018 年 7 月、ＭＦＮ税率を 25％から 15％に引下げ）を本協定で約束。
　その他の工業製品では、陰極銅（即時撤廃）、プラスチック押出造粒機（即時撤廃）、フェロニッケ ル（即時撤廃）、ポリウレタンの一次材料（即時撤廃）、熱延鋼板の一部（即時、11 年目、16 年目又は 21 年目に撤廃）、合金鋼の一部（即時撤廃）等の関税が、中国側で撤廃される。

【農林水産品等】
　（最終的な関税撤廃品目の例）
　 パックご飯（21 年目）、米菓（21 年目）、ほたて貝（11 年目、又は 21 年目）、さけ（11 年目、又 は 21 年目）、ぶり（11 年目、又は 16 年目）、切り花（11 年目、又は 21 年目）、ソース混合調味料 （21 年目）、清酒（21 年目）などの関税が、中国側で撤廃される。

＜物品以外の市場アクセス＞
　1）サービスにおける中国側の公約
　　・ 理容及びその他美容サービスについて、外資出資⽐率に係る規制を行わない。
　　・ 生命保険及び証券サービスについて、外資出資⽐率に係る規制を行わない。
　　・ 高齢者向け福祉サービスについて外資出資⽐率に係る規制を行わない。
　　・ 高級物件（アパート・オフィスビル等）の不動産サービスについて、外資出資⽐率に係る規制を行わないことを約束。

　2）投資に関する中国側の公約
　　・ 農業、漁業、鉱業及び製造業について、同国の外商投資参入特別管理措置（2019 年版）等の国内法令に基づく措置（特殊自動車及び新エネルギー車の製造について外資規制を行わないこと等）から自由化の程度を悪化させないことを約束。
　　・ 一部の分野を除き、投資の条件として、投資先企業への技術移転や関連情報の開示等を要求しないことやライセンス契約に基づくロイヤリティを一定の率や額にするよう要求しないこと等を約束。

※次号では、規定されたルールを解説する予定です。

以上