中国でのOEM生産と販売展開における現地のオペレーションについて

当社は少し特殊な食品のメーカーですが、中国でのOEM生産および販売展開を検討中です。これから工場や販売代理店との契約締結を予定しており、中国に現地法⼈を持たず、製造費⽤を⾃社で負担して、代理店が中国国内で販売する三者間契約を検討しています。こうしたスキームで、中国国内で販売展開することは可能でしょうか︖

 中国市場でOEM生産品を展開する際、現地法⼈を持たずに日本から製造費⽤を負担し、代理店を通じて中国国内で販売するというスキームは、理論上は不可能ではありません。ただし、実務上はさまざまな制約やリスクが伴う点にご注意が必要です。
 
 まず、中国国内でOEM生産を⾏い、現地流通させる場合、原則として現地法⼈の設⽴が求められます。すなわち、流通・販売の際には中国法⼈名義でのラベル表示や食品登録申請が必須であり、海外法⼈や個⼈名義で中国市場に流通させることは認められていません。そのため、最終的には中国側の法⼈を介して手続きを進める必要があります。
 一方で、現地法⼈を設けずに中国の代理店(現地企業)名義で委託生産し、販売してもらう形も選択肢としては存在します。しかしこの場合、ブランドや品質管理のコントロールが難しくなり、知的財産や表示・流通に関するトラブルリスクも大きくなります。加えて、日本法⼈としては中国国内で銀⾏⼝座を開設することができず、現地で発生した利益を日本に還流させる仕組みも限られるため、収益面での透明性や資⾦移動に課題が残ります。

 また、近年は中国政府による外貨流出規制が強化されており、配当や資⾦送⾦に関しても法務・税務面で⾼度な知識が求められるようになっています。法規制も頻繁に変更されるため、最新情報の確認は欠かせません。
 実際に生産委託を進める場合は、「最初は何でもできる」と言いがちな中国工場の実情をよく理解し、日本国内と同じ感覚で任せてしまうのは危険です。トラブルを未然に防ぐためにも、当初は日本側担当者が現地で常駐し、製造プロセスを直接管理する体制を整えることをご検討ください。

 総じて、中国市場でのOEM生産および販売展開を本格的に進める場合は、まず「現地法⼈の設⽴可否や必要性」を最優先でご検討ください。代理店を介したモデルはリスクが⾼く、ブランドや利益の管理、資⾦送⾦の面でも多くの課題があるため、慎重な事業計画が必要です。
 なお、昨今の中国市場は、米中摩擦や地政学リスクの影響もありながら、日本企業や欧州系ブランドにも新たなビジネスチャンスが広がっています。中国市場への参入は決して容易ではありませんが、適切な準備と現地事情への対応⼒があれば着実に成果を出すことも可能です。

  
以上