中国本土、香港に商標出願した場合の告知タイミングについて
- 先日、中国本土と香港に弊社の商標を出願させていただきましたが、できるだけ早期に、その商標を使った商品の販促を展開していきたいと思います。どのタイミングで告知すれば、抜け駆け(冒認)出願のリスクを減らせるのでしょうか。
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出願申請が完了したことで、商標を活⽤して商品の告知や販促を早く展開したい気持ちは理解できます。しかし、中国や香港での告知は、現時点では早すぎます。告知を開始すると、これらの地域における商品の販売開始を示唆することになり、抜け駆け出願を繰り返す業者に狙われる恐れがあるからです。
【中国⼤陸の場合】
・出願件数とリスク︓
中国⼤陸では、1日あたりの商標出願件数が非常に多い(※)ため、第三者による類似商標の抜け駆け出願リスクがあります。特に、商標権利者が出願する前や出願が⼀旦拒絶された場合、第三者が先願を利⽤して出願する可能性があります。
※中国では、1日あたり約2万件前後(年間700万件強の商標が出願されている)。日本は年間で15,000件であり、1日当たり400件程度。・受理通知とデータベース反映︓
出願申請後、通常1ヶ⽉程度で商標受理通知書が発⾏され、その時点で情報が中国商標局の正式なデータベースに登録されます。データベースに登録済みであれば、同⼀カテゴリ・同商標・同商品に関して第三者の出願が拒絶されるため、告知前に必ず受理通知の取得が必要です。
【香港地区の場合】
・出願後の公開状況︓
香港では、出願後2〜3週間以内に商標が香港知識産権署の公開データベースに掲載されます。香港では抜け駆け出願のリスクが⽐較的低いため、受理通知前に告知しても⼤きな問題は⽣じにくいです。・リスク回避策︓
もし心配な場合は、受理通知書を取得後に宣伝を開始するか、出願中であることを示すTMマーク(™)を表示することで、リスクを軽減できます。
■中国国家知識産権局の出願登録システムについて
・データ表⽰の遅延︓
中国国家知識産権局では、直近1〜2ヶ⽉分の出願データは⼀般公開されず、表示に遅延が存在します。事前調査で類似商標が確認できたとしても、この遅延期間中に隠れた出願がある可能性は排除できません。
・早期出願の重要性︓
最終的な審査官の判断に依存するため、早期に手続きを進めることが最も確実な対策となります。商標権をまだ申請していない状態で製品の宣伝や販売を開始すると、後に同様の商標を持つ権利者から差し⽌め請求を受けるリスクがあるため、タイミングには十分注意が必要です。
したがって、受理通知の取得タイミングは、中国⼤陸では出願から約1ヶ⽉後、香港では出願後2〜3週間以内に受理通知書が発⾏されます。いずれの地域でも、受理通知を受け取ってから告知を開始することが安全です。
告知時にTMマーク(※)を表⽰することで、現在「出願中」であることを明示し、第三者による先願出願のリスクをさらに低減できます。
※通常は、TMマークはそのロゴが商標として出願中であったり、出願中に拒絶されたり、異議申し⽴てされたりしていることを表します。商標の出願や再審(異議を申し⽴て)には相当の時間がかかるため、商標出願人は早く当該商品を販売、普及させるために、商品にTMマークを使⽤し、商標を出願したことを他人に知らせるようにします。
このTMマークの使⽤は、商標局の許可を得る必要がなく、自分で付けることができます。TMマークを使⽤しても、法律で保護されるわけではなく、また、第三者も同様または類似の商標を使⽤することができ、権利侵害にはなりません。
以上