「回転寿司の中国戦国時代」〜⽇系3強(スシロー・くら・はま)対台湾の巨⼈(争鮮)〜

中国でスシローが大人気で、大⾏列ができているというニュースを⾒ましたが、なぜそんな現象が起きているのでしょうか。

 先週の質問に今回も回答します。現在、日系チェーンの中で最も中国市場でのプレゼンスを高めているのが、先週紹介した「スシロー(FOOD & LIFE COMPANIES)」。最新のデータによれば、中国大陸での店舗数は71店舗に達しました。その出店スピードとエリアの広がりが注目されている⼀⽅、天津や北京といった華北エリア、内陸の成都へも進出を果たしています。
 スシローの勝因は、「手の届く贅沢(Affordable Luxury)」というポジショニングの確⽴にあります。また、大型デジタルビジョンを搭載した「デジロー」や個室の導入など、現地のニーズに合わせた店舗体験のDX(デジタルトランスフォーメーション)も、若年層の⽀持を集める大きな要因となっています。

 対照的に、苦渋の決断を下したのが「くら寿司」です。店舗数は中国大陸 0店舗(上海3店舗を閉鎖・撤退)と⽶国や台湾では絶好調の同社ですが、中国大陸市場においては、進出からわずか2年での撤退となりました。
 くら寿司は2023年6月に上海へ1号店を出店し、市内に計3店舗を展開。「10年間で100店舗」という目標を掲げていました。しかし、競合との競争が激化して収益化に苦戦。店舗単体での赤字が続いたことから、2025年内に全店舗を閉鎖する戦略的撤退を選択しました。今後は、成功モデルが確⽴されている⽶国および台湾市場へ経営資源を集中させる⽅針です。
 はま寿司(ゼンショーHD)は日系大手の中では比較的早い2014年から上海に進出しており、中国本土が87店舗で、上海は22店舗となっています。上海を中心に⻑期間にわたり営業を継続し、⼀定のブランド認知を獲得しています。

 近年は大陸だけでなく、中華圏全体での⾯展開を強化。2016年の台湾進出に続き、2023年には⾹港・九龍地区に1号店をオープン。⾹港店ではオープン直後から⾏列ができるなど、好調な滑り出しを⾒せています。ゼンショーグループの強⼒な調達⼒を活かし、大陸・⾹港・台湾の3拠点で着実なシェア拡大を図っています。
 日系回転寿司にとって最大のライバルであり、アジア市場で圧倒的なシェアを誇るのが、台湾発の回転寿司チェーン「争
鮮(Sushi Express)」です。中国本土が190店舗、上海が20店舗となっており、全世界で650店舗以上を展開しています。その規模は日系チェーンを遥かに凌駕しており、中国大陸においても低価格帯の寿司市場を席巻しています。
 争鮮の最大の武器は、徹底した「低価格戦略」と「サプライチェーンの⽀配」です。均⼀価格での提供を実現するために、サーモンの輸入では台湾最大手となるなど、⾷材調達の上流⼯程まで押さえています。 また、テイクアウト専門店「争鮮gogo」や高価格帯の「争鮮PLUS」など、マルチブランド戦略で多様な顧客層を囲い込んでいる点も、日系企業にはない強みです。
 中国の回転寿司市場は今、明確な「二極化」の様相を呈しています。⼀⽅では、「争鮮」が圧倒的な店舗数と低価格を武器に、大衆市場(マス層)をガッチリと掴んでいます。これに対し、日系チェーンは「品質」と「ブランド体験」で勝負を挑んでいますが、その明暗は分かれました。
 スシローは、高品質とDXによる付加価値で「争鮮」より上の価格帯(ミドルアッパー層)の開拓に成功し、拡大路線を維持しています。 くら寿司は、市場の厳しさと収益性の壁に阻まれ、早期撤退という現実的な判断を下しました。
 中国の消費者は今、非常にシビアです。「価格」か「圧倒的な体験価値」か。そのどちらかを明確に提示できないプレイヤーは、たとえ大手であっても淘汰される——それが現在の中国回転寿司市場のリアルな現場です。

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