2025 年中国全人大から見える経済の方向性
- 中国の全国⼈⺠代表大会(全⼈代)が3月8日に閉幕しましたが、今年の全⼈代から⾒えてくる今後の中国経済の方向性について、教えてください。
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今日(3 月 11 日)、第十四期全国⼈⺠代表大会第三次会議(全⼈代)が閉幕しました。先々週に続いて、全⼈代の結果から、中国の今後の方向性について整理したいと思います。
1.「5%成⻑目標」の堅持と逆サイクル調整の強化
政府活動報告では、先週も伝えた通り、2025 年の GDP 成⻑率目標を「5%前後」に設定し、2024 年と同水準を維持することが明記されました。中国社会科学院の余永定氏は「中国は 5%以上の成⻑を達成可能」と指摘し、その根拠として「財政・⾦融政策の逆サイクル調整の強化」を挙げています。(2) 特定産業への集中打撃。
具体的には、2024 年 9 月以降の政治局会議で打ち出された「超常規的な逆サイクル政策(非常规逆周期政策)」が継続され、総需要不⾜への対処が焦点となります。通常とは異なる形で実施される非伝統的な政策⼿段を指しますが、特に経済の急激な減速や危機時に、従来の政策対応を超えた特別な介⼊を⾏うことを意味すると中国では説明されています。
とくに、インフラ投資が主要な政策ツールとして位置付けられ、2024 年の 4.4%から「⼆桁成⻑」が求められる可能性が高いとされています。財政面では、中央政府の債務余地を活用した大規模な財政出動が想定され、地方政府の財政圧迫を緩和するため、国債発⾏拡大や特別債の活用が進む⾒込みです。
2.内需拡大と消費低迷のジレンマ
2024 年の経済成⻑を⽀えたのは輸出の急拡大(貿易⿊字 7.06 兆元、前年比 22.1%増)であり、消費の伸び(GDP 成⻑への寄与度が 4.3%から 2.2%に低下)が顕在化しました。この構造的課題に対し、2025 年は「消費主導型成⻑」への転換を目指すことになりました。
具体的な対策として、所得分配改革による家計可処分所得の増加、都市・農村間の消費格差是正、デジタル経済やグリーン消費の促進が挙げられています。ただし、不動産市場の調整継続(2024 年開発投資 10.03 兆元、前年比10.6%減)や若年層失業❹の⾼⽌まりが消費回復の⾜枷となるリスクも指摘されています。3.輸出依存からの脱却と地政学リスク
2024 年の輸出拡大は⽶中貿易摩擦の緩和とグローバルサプライチェーン再編に⽀えられていました。しかし、2025年は、①トランプ政権の関税が再燃、②基盤効果の減退(基数效应减退)、すなわち前年同期の影響で⾒かけ上の成⻑❹が弱まること、また、③世界経済減速――の三重のリスクが指摘されています。このため、政府は「内循環強化」と「新三品戦略(電動⾞(EV)・リチウム電池・太陽光パネルの輸出拡大)」を組み合わせ、ハイテク分野での競争⼒向上を図る方針です。⼀方で、EU の炭素国境調整措置(CBAM)など環境規制の対応が新たな課題として浮上しています。
4.構造改⾰と法制度の整備
会議では「全国⼈⺠代表大会代表法改正草案」が審議され、代表の権限強化とガバナンス効率化が議論されました。経済⾯では、国有企業改革の加速(混合所有制の推進)、⺠営企業⽀援(融資アクセスの改善)、地方財政の透明性向上が重点課題として挙げられています。また、最高⼈⺠法院と最高⼈⺠検察院の報告では、⾦融詐欺や知的財産権侵害への厳格な対応が強調され、市場秩序維持を通じた投資環境改善が打ち出されています。5.中⻑期的視点︓2035 年「現代化」への布石
政府は 2035 年までに「中等先進国水準」(1 人あたり GDP2 万ドル超)の達成を掲げており、2025 年はその中間目標年に当たります。このため、短期的な景気対策と並⾏し、AI・量⼦技術・バイオ医薬などの戦略的新興産業への投資が加速します。余永定⽒は「制度変⾰・人的資本蓄積・技術進歩が⻑期成⻑の鍵」と指摘し、教育制度改 ⾰や研究開発費の GDP 比引き上げ(現⾏ 2.5%→3%以上)が必要と提言しています。
今年の全⼈代では、「高品質発展」が引き続き経済政策の中⼼テーマとして強調され、特に以下のような技術革新と環境配慮を軸とした成⻑戦略が具体化されています。全人代の総括︓リスク管理と政策実⾏⼒が成否を分ける
2025 年の中国経済は、「内需拡大」、「輸出構造の⾼度化」、「債務リスク管理」の三つ巴のバランスが求められています。全⼈代で⽰された方針は総花的に⾒えますが、実際の政策実⾏では資⾦配分の優先順位(例︓インフラ投資 vs 社会保障)や地方政府の債務圧迫(2024 年末時点で地方政府債務残額 40 兆元超)への対応がカギとなります。さらに、⽶国を中⼼とした⻄側諸国の技術封鎖や台湾問題を巡る地政学リスクが経済運営に影を落とすのか…今後の注目点は、第 3 四半期までの実体経済データと第 19 期五中全会(2025 年秋予定)での政策微調整に集まるーーと分析されています。
出所︓中国の各種ネット報道︓
※2025 年,中国经济将如何发展︖
https://finance.sina.com.cn/roll/2025-02-12/doc-inekfsta9238394.shtml
※奋⼒打开改革发展新天地——2025 年全国两会
https://news.cctv.com/special/2025lianghui/
以上