マドプロ出願と中国国内出願、中国はどちらの商標出願がよい?(2)
- 複数の国の商標出願を行う場合、マドプロ出願が便利だと聞いていますが、中国の出願については他国と比較して少々状況が異なるそうです。何が違うのか詳しく教えてください。
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今回も中国商標のマドプロ出願に関して解説する。中国で商標を登録するには 2 つのルートがあり、一つは通常の「中国商標局」に出願するルート(以下「中国国内出願」という)と、もう一つは、「マドリッド協定議定書(マドリッド協定プロトコル)」に基づいて本国の商標出願または登録を基礎に中国を指定することにより出願するルート(以下「マドプロ出願」という)である。
ただし、近年は中国国内出願も多くなり、かならずしもマドプロ出願の方が中国国内出願に比べて大きなメリットがあるとはいえない状況となっていることも前回解説した。今回は、マドプロ出願する問題点をさらに掘り下げてみる。
(1) 台湾と香港は地域として扱われるのでマドプロで商標を出願できない。
(2) マドプロ出願は、国際登録の日から 5 年以内に本国(日本)における基礎出願・基礎登録に対し拒絶、取下げ、放棄、無効、取消しが成立した場合、国際登録も取消されてしまうというリスクがある。これに対して、中国国内出願は登録後に無効または取消の事由がない限り、権利は安定的である。
(3) 中国国内出願は、中国商標局は登録公告後に『商標登録証』を発行するが、マドプロ出願には『商標登録証』が発行されないので、登録後に中国商標局に別途『国際商標登録証明』の発行を申請する必要がある。
(4) マドプロ出願の場合、登録証明申請を提出する時期は厳しく制限されており、審査期間(12 か月または 18か月で、加盟国/協議国によって異なる)が満了しないと申請できない。これに対して、中国国内出願の場合は、登録公告後、出願人が申請しなくても商標登録証が発行される。
(5) 指定商品・役務記載は、中国国内出願の場合、出願後に、中国商標局から補正通知がない限りは、商品・役務を補正することができない。一方、マドプロ出願は、出願後、中国商標局が審査を経て拒絶査定を下した後でも指定商品・役務の修正が可能である。
(6) 中国国内出願の場合、中国商標局が発行した《類似商品・役務区分表》(または中国商標局が別途公表した受理される非規範的な商品・役務リスト)に収録された規範的な商品・役務の記載を忠実に指定する必要がある。
一方、マドプロ出願の場合、中国商標局は、《類似商品・役務区分表》に記載のない商品・役務をそのまま認める傾向がある。しかし、近年、中国商標局はマドプロ出願に関しても《類似商品・役務区分表》にない商品・役務に対する補正指令を発する場合がある点に留意する必要がある。
さらに、マドプロ出願を利用し、指定した商品・役務の表現が中国語で不明確な内容の場合、審査官の個人の理解や実務経験に基づき、指定商品・役務をどの類似群に分類するか判断される。
したがって、商品・役務の表現について、出願人が予想した権利範囲(日本での権利範囲)と中国における実際の権利範囲と一致しないことがよくある。
※新興国等知財情報データバンク
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/27058/以上