来料加⼯からの撤退について(1)

当社では、先代の社⻑のときから 1996 年から来料加工という委託加工貿易を続けてきましたが、現在は人件費も高騰し、来料加工に対するメリットが薄れていることから撤退することになりました。しかし、日本の本社には来料加工の仕組みをしっかり理解している者がおらず、どういった規則に従えばよいのかよくわかりません。ご指導ください。

 来料加工とは、外国の委託者が原材料を無償で提供し、中国の加工受託者がこれを加工した上で、全量を輸出する形態である。加工委託者から加工企業に対しては加工賃のみが⽀払われる。ただし広東省の場合は、法人格のない加工工場が、会社登記のみを外国企業に提供し、実際の工場の運営権を外国企業に移管するという、特殊な方法が採用されてきた。
 しかし、2000 年代の後半から中国政府は低付加価値分野の加工貿易抑制に⼤きく舵を切り、広東省で普及していた法人格を持たない組み⽴て加工のみの来料加工工場に対し法人転換の動きが進んだ。
 2009 年には、税関総署から「来料加工廠の法人転換に関する設備輸⼊税収に関する問題の通知(財関税【2009】48 号)」と税関双書広告第 62 号が公表され、税関監督管理機関内(輸⼊してから 5 年以内)の無償貸与設備を 2011 年 6 月 30 日(その後、2012 年 12 月 31 日まで期限が延⻑)までに現物出資として法人を設⽴する場合、関税・増値税の補充納付が不要となることが明確化されたことで、来料加工場の法人転換の動きが本格化した。
 したがって、現在の広東省における来料加工工場は、法人格のある中国企業が来料加工工場として日本企業と契約しているはずである。したがって、ここでの来料加工からの撤退は、法人格のある中国企業との契約解除を前提に話を進めていく。

(1)来料加工からの撤退
来料加工は、中国企業に委託加工する形態である。そのため、来料加工からの撤退とは、すなわち中国企業との来料加工契約の解除を意味する。契約解除の条件は同契約に規定されているのが基本であり、以下のような内容が含まれる。

① 解除の何ヵ月前までに、通知をしなければならないか。通常は 3 ヵ月前までに書面で通知する。
②契約を解除する日本企業は、中国企業が被る損失に関して、どの程度補償をしなければならないか。
③不動産(工場や宿舎)、工場が購⼊した資産、日本企業が提供した保税設備などの所有権の帰属

(2)来料加工工場で使用していた保税設備移転について
①保税移動の可否
現有保税設備は、税関監督期限が満了していれば、保税のまま他企業への移動が可能である。厳密に言えば、保税のまま移動というより、税関監督期間満了後の設備移動となる。移動する前に来料加工工場が税関監督期間満了による税関監管解除の⼿続を⾏わなければならない。

②税関監管解除の⼿続
 主要必要書類:
a.税関監管解除申請書
b.設備加工貿易⼿册
c.中古機電設備輸⼊許可証
d.検査検疫証書
 関税と輸⼊増値税は免除され、輸⼊時、中古設備輸⼊の申告が⾏われた場合、上記必要書類の c.と d.は必要ない。

 一般的に申請必要書類が揃った場合、税関での必要日数は 20 日間とされている。ただ、他企業への移管の場合、中古機電設備輸⼊許可と検査検疫証書の取得に一定の期間が必要となり、トータルで 1 ヵ月前後かかるとみておく必要がある。
 税関監管解除⼿続の終了後、対象設備の移動は認められる。ただし、引き続き加工貿易の業務の使用に限られ、売却や他の目的への使用は禁止される。(海関総署公告 2001 年第 16 号)

※次号は来料加工用保税設備の税関監菅解除等の解説に続く。