マドプロ出願と中国国内出願、中国はどちらの商標出願がよい?(1)
- 複数の国の商標出願を行う場合、マドプロ出願が便利だと聞いていますが、中国の出願については他国と比較して少々状況が異なるそうです。何が違うのか詳しく教えてください。
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中国で商標を登録するには 2 つのルートがあります。一つは通常の「中国商標局」に出願するルート(以下「中国国内出願」という)と、もう一つは、「マドリッド協定議定書(マドリッド協定プロトコル)」(以下「マドプロ」)に基づいて本国の商標出願または登録を基礎に中国を指定することにより出願するルート(以下「マドプロ出願」という)です。
◆中国のマドプロ出願について
マドプロ出願の方が、本国から一括で迅速に世界各国における商標の保護を図ることができ、比較的費用は安く、商標の管理も容易になるメリットが挙げられる。また、本国において基礎出願もしくは基礎登録が必要となるが、各国ごとに出願する必要がなく、一つの出願で複数のマドプロ締結国への権利取得が可能である。
さらに、出願後にも商品・役務を追加することができ、実際の事業計画に基づき出願を修正できる。また、名義・住所変更、更新手続を一括で一つの書類で行うことができる。これは、コスト・手間の点では大きなメリットとなる。◆マドリッド制度: 国際商標出願を行う – 手続の流れ
1.国際商標出願の作成
2.国際商標出願を本国官庁に提出:
本国官庁において、基礎出願 (登録) との同一性等を確認する。その後、本国官庁は国際出願を認証し、WIPO 国際事務局(WIPO)へ送付する。
3.方式審査:
WIPO では、国際商標出願が全ての方式的要件 (必要な連絡先、少なくとも 1 の締約国の指定、画像の質、手数料の支払等) を満たしているかどうかを審査する。不備がある場合、出願人と本国官庁に対して、所定の応答期間内 (通常 3 ヶ月以内) に不備を解消する方法を記載した「欠陥通報」を送付する。
4.国際登録簿に商標が記録 (国際登録) されるとともに、「 WIPO Gazette of International Marks」において公開され、WIPO の方式的要件を満たすことを示す「国際登録証明書」(Certificate of Registration) が送付され、各指定締約国に通報が送付される。
5.実体審査: 各指定締約国の官庁が実体審査を行う。各官庁は、指定通報の通報日から所定の期間内 (12 ヶ月または場合によっては 18 ヶ月以内) に、保護を付与または拒絶しなければならない。◆中国商標マドプロ出願の問題点
近年は中国国内出願も多区分制度を導入しており、費用負担も軽減され、中国商標局が審査期間を短縮する措置を積極的に導入し、1 年未満で登録できるのが普通。一方でマドプロ出願は上述したように 18 ヵ月の期間を見ておく必要がある。
そのため、マドプロ出願の方が中国国内出願に比べて大きなメリットがあるとはいえない状況も存在する。また、中国に独特な商標法制度およびその運用が存在し、言語も異なるため、ルートを選択する際には慎重に検討する必要がある。
※新興国等知財情報データバンク
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/27058/
次号では、中国商標のマドプロ出願に関する問題点をさらに掘り下げてみます。以上