【現地レポ】上海・中山公園のスシローの⼤⾏列

中国でスシローが大人気で、大⾏列ができているというニュースを⾒ましたが、なぜそんな現象が起きているのでしょうか。

 上海の中⼼部、中⼭公園エリア。巨大ショッピングモール「龍之夢購物中⼼」の中に、異様な熱気に包まれている場所があります。日本の回転寿司チェーン「スシロー(寿司郎)」です。「中国で日本の海産物は敬遠されているのでは︖…」。そんな疑問を持つ方も多いかと思います。しかし、2026年1月現在、上海に滞在して筆者がみたのは、それらの懸念を吹き⾶ばすような光景でした。今回は現地のリアルな状況と、なぜこれほどまでに人気なのか、その背景にある「中国回転寿司事情」を考えてみます。

 その人気ぶりは噂以上でした。数日前に中⼭公園駅直結のショッピングモール「龍之夢(ロンジモン)」にあるスシローへ足を運びました。私が店に到着したのは、午前10時30 分ごろです。多くの飲食店がランチタイムに向けて準備をしているこの早い時間帯なら、すぐに入れるだろうと高をくくっていましたが、その予想は完全に裏切られました。店の前にはすでに大⾏列ができていました。店内を覗くと、空席などなく、家族連れや若いカップルが皿を積み上げていました。

 「10 時半でこれなら、12時にはどうなってしまうのか︖」と思わざるをえないほどの盛況ぶりでした。では、なぜ今、上海でこれほどまでにスシローが⽀持されているのでしょうか。単なる「日本食ブーム」という⾔葉だけでは⽚付けられない、中国市場特有の理由が⾒えてきました。

なぜそんなに⼈気なのか︖ 上海の「回転寿司事情」を整理する

 あの大⾏列の背景にある要因を、現地の消費トレンドや競合状況と合わせて整理してみると、大きく分けて3つの理由が考えられます。

1.圧倒的な「コストパフォーマンス」への回帰

 現在の中国、特に上海の消費者は非常にシビアになっています。経済状況の変化もあり、「ただ高いだけのもの」は選ばれなくなりました。上海の⼀般的な日本料理店で寿司を食べようとすれば、ランチでも100元〜200元(約2,000円〜4,000円)は覚悟しなければなりません。しかし、スシローであれば、⼀皿10元(約200円)から楽しめます。

    • 10元の皿︓ 定番のサーモンやエビ
    • 15元の皿︓ 創作系や少し贅沢なネタ
    • 28元の皿︓ 大トロなどの高級ネタ

     お腹いっぱい食べても、⼀人当たり100元(約2,000円)以下で収まることがほとんど。デフレ経済に突入していると⾔われる上海の物価が上昇し続けている中で、「清潔で、美味しく、サービスが安定していて、しかも安い」というスシローの⽴ち位置は、「⼿頃な贅沢(Affordable Luxury)」として、若者やファミリー層の⼼をがっちり掴んでいます。

    2. 「サーモン信仰」と現地化メニューの成功

     中国の寿司市場を語る上で外せないのが、「サーモン(三文魚)」の人気です。日本ではマグロが王様ですが、中国で
    は圧倒的にサーモンが王様です。脂が乗っていて、生臭さが少なく、わかりやすく美味しい。これが中国人の味覚にフィットしています。
     スシローはこの需要を完璧に理解しています。
    〇ジャンボとろサーモン、〇焼きとろサーモン、〇チーズサーモン、〇バジルサーモン

     このように、サーモンメニューのバリエーションが非常に豊富です。また、中国人が好む「炙り系」や「⾁寿司」、「揚げ物」などのサイドメニューも充実しており、「生魚が苦⼿な人がグループにいても楽しめる」という安⼼感があります。この徹底したローカライズ(現地化)が、⾏列を生む大きな要因です。

    3.「⾷の安全」に対する信頼とブランド⼒

     数年前に処理⽔の問題があり、日本産⽔産物への風当たりが強まった時期がありました。しかし、中国の消費者は非常に現実的(プラグマティック)です。「政治的な話はさておき、目の前のこの店は安全か︖ 美味しいか︖」彼らはそこをシビアに判断します。スシローのような大⼿日系チェーンは、品質管理や衛生管理が徹底されているという「ブランドへの信頼」が根底にあります。地元の個人店よりも、日本の厳しい基準をクリアしている大⼿チェーンの方が安⼼できると考える層が、結果としてスシローに回帰していると思います。
     特に中⼭公園の「龍之夢」は、上海でも指折りの巨大モールであり、客層も感度の高い中間層以上が多いエリアです。彼らが「並んででも食べたい」と判断していること自体が、現在のスシローの品質が信頼されている証と⾔えるでしょう。

     1月の上海、中⼭公園で⾒たスシローの⾏列。 それは単なるブームではなく、「価格・味・安全」のバランスを厳しく⾒極めた上海の人々による「賢い選択」の結果とみられています。
     かつては「日本食=高級」というイメージでしたが、今は「日常、気軽に食べることができる高品質な食事」として定着しています。10時半の⾏列は、今の上海の消費パワーと、日本ブランドの底⼒を⾒せつけてくれました。

    ※次号に続く・・・

      以上