中国の版権(著作権)と外観特許(意匠)の違い

当社では、新しいデザインを加えたアクセサリーの新製品を中国で販売することになったので、知財(知的財産権)の権利化を進めたいと考えています。著作権がよいのか、あるいは意匠権がよいの、この二つの権利の違いや特徴を教えてください。

 まず、著作権と意匠権について、確認しておきます。著作権は中国語で「版権」と言い、意匠は「外観専利設計(以下、外観特許)」と言います。
 版権は、「創作物」を保護する権利です。著作物(文章、絵画、音楽、映画、ソフトウェアなど)を創作した瞬間から、著作者に⾃動的に与えられる権利。著作者は、著作物を複製、配布、公衆送信するなどの⾏為について、他者を排除しつつ独占的に管理する権利を持ちます。また、版権は人格権も含み、著作者の名誉や人格を保護する「著作者人格権」も含まれます。
 一方の外観特許は、基本的は「⼯業デザイン」を保護する権利とされています。法律に基づき、物品の形状、模様、色彩、またはこれらの結合からなるデザインが対象となり、専利法(⽇本の特許法に相当するもの)によって保護されます。
 外観特許を取得すると、その外観特許を無断で製品化したり販売したりする他者を排除できる強い法的権利(独占排他的権利)を持ちます。また、特許などと同じく登録が必要で、特許庁への出願・審査を経て登録されることで初めて権利が発生します。

 ここまでは⽇本も中国も変わりませんが、ここからの説明は中国と⽇本の違いが出てきます。
 商標、版権、特許は知的財産権の分野で並列の保護措置に属し、その中で版権と外観特許はすべて顧客の設計を保護することができます。そして、⽇本では実質審査を⾏いますが、中国では実質審査をありません。そのため、中国では登録の成功率は高いとされています。企業が⾃分のデザインと製品を包括的に保護し、予算の範囲内で保護したい場合は、版権と外観特許の両方を申請するということも考えられます。また、両者の違いを理解しておけば、企業は適宜選択することができます。

 ■中国における版権(著作権)と外観特許(意匠)の違い︓
1.申請の前提が異なる︓
 版権は⾃分で創作した作品または他人に設計を依頼したオリジナル作品であれば、登録ができ、強調するのは「独創性」
 一方の外観特許は「既存の設計に属さない、または既存の設計と大きな違いがある」ことを満たす必要があり、強調するのは「創始性(首創性)」
2.保護の存続期間︓
 版権は会社が申請すれば、有効期限は 50 年、個人が申請すれば終身または 50 年を保護する。一方で外観特許の有効期限は 15 年。
3.費⽤の違い︓
 版権は権利を獲得した後、以降の使⽤過程で、添付図⾯を補充する必要がある場合、若⼲の費⽤が発生し、それ以外はいかなる費⽤も発生しない。
 現在、版権局が版権証明書を発⾏する際、証明書には作品図が反映されておらず、顧客がその版権を⽤いて税関に登録したい場合は、版権局に補足図を申請する必要があり、版権局は申請を受けると、版権局のスタンプが押された作品図を発⾏する。出願者が税関の届出をしなければ、添付図⾯を補充する必要はなく、費⽤も発生しない。
 一方の外観特許出願費⽤は、授権を取得した後、その後が毎年年会費を納付する必要があり、しかも年会費の料⾦が異なり、納付しなければ、外観特許は失効する。
4.申請の所要期間が異なる︓
 版権は約 1-2 ヶ月で版権証明書が発⾏される、外観特許は約 4〜6 ヶ月の時間が必要。
5.保護区域の違い︓
 中国は『ベルン条約』加盟国に属し、版権証明書を取得すると、190 以上のメンバー国内で保護されるが、外観特許は出願国、すなわち中国大陸だけで保護される。
6.権利擁護⼒︓
 版権の権利擁護⼒は弱いが、外観特許の権利擁護⼒は強い。
7.使⽤範囲が異なる︓
 顧客の製品について、版権図形はいかなる製品にも添付でき、包装にも添付できるが、外観特許には依存する製品が必要であり、単純な平⾯パターンではない。

 版権と外観特許を同時に出願すれば、製品を複数保護することができ、顧客の設計の独創性を保護することができ、製品の構造を保護することもできます。中国では、革新的でクリエイティブな製品の多くは、両方を選択して同時に保護することだとされています。

 
以上