上海・浦東の“完全無人”ロボタクシー

上海の浦東地区で完全無人運転のロボタクシーが走っているそうですが、どのような状況でしょうか。

 2026 年1月、上海・浦東新区の⾦橋(Jinqiao)エリアにて、百度(Baidu)の⾃動運転配⾞サービス「ApolloGo(萝卜快跑)」に試乗しました。ここは単なるテストコースとは異なり、デリバリーのスクーターが激しく⼊り乱れ、歩⾏者や⼀般⾞両が交錯する、極めて交通量の多いリアルな市街地です。この複雑な環境が、AIを実戦で鍛え上げるための戦略的特区として機能しています。
 現在、⾦橋エリアは⾃動運転⾞の「コアエリア」となっており、未来の交通社会を先取りする光景が広がっています。以下、現地の体験と技術的背景、そして最新の展望について解説します。

1.上海・⾦橋エリアと「Apollo」ロボタクシーの実態
 
 浦東新区の⾦橋エリアでは、⾃動運転⾞はもはや実験レベルではなく、⽇常の風景に完全に溶け込んでいます。上海全体では1,000台以上の⾃動運転⾞が認可を得て走⾏しており、その中でも百度は約500台から1,000台規模へと急速に投⼊⾞両を拡⼤させています。
 エリア内では数分に⼀度はロボタクシーと遭遇し、交差点によっては前後左右に走っているというほどの密度です。今回試乗したのは、北汽極狐(BAIC Arcfox)の高級EVをベースにした第5世代モデル「Apollo Moon」ですが、路上ではハンドルすら存在しない次世代量産モデル「RT6(第6世代)」の導⼊も始まっており、⾞両の世代交代が猛烈なスピードで進んでいます。

2.人間を超える「目」︓4つのセンサーによる融合認識

 複雑な上海の交通事情をスムーズに切り抜ける鍵は、人間以上の知覚能⼒を持つ「融合認識」技術にあります。⾞両には主に以下の4種類のセンサーが搭載されています。

  • LiDAR(ライダー)︓ 屋根に設置されたレーザーセンサー。最新モデルでは可動部のないソリッドステート(半固体)式も採⽤され、周囲の物体との距離を数センチ単位で測定。夜間や逆光に左右されず、正確な3Dマップを構築します。
  • ⾼精度カメラ︓ ⾞両周囲に13台配置。信号の⾊、標識、路⾯の⽩線などを識別する「⾊の目」として、360度の視界を確保します。
  • ミリ波レーダー︓ 電波を使⽤して他⾞の速度を計測。霧や⼤⾬などの悪天候に強く、遠⽅の⾞両の動きを確実にキャッチします。
  • 超⾳波センサー︓ バンパー周辺に12個配置。死角になりやすい⾄近距離の障害物を検知し、接触を未然に防ぎます。

 

3.⾞路協同(ICV)︓インフラと連携するV2X技術
 中国の⾃動運転戦略の最⼤の特徴は、⾞両単体の性能向上にとどまらず、道路インフラ全体を高度化する「⾞路協同(ICV)」戦略にあります。

  • V2I(Vehicle to Infrastructure)︓ 路上のスマート信号機から「赤信号が終わるまでの秒数」や「推奨通過速度」が⾞両に直接送信されます。
  • V2N/V2X(Vehicle to Network/Everything)︓ 5Gネットワークや路側センサーを通じて、⾞両の死角にいる歩⾏者の存在や広域の渋滞情報がリアルタイムに共有されます。この「⾞+通信+クラウド」の⼀体運⽤により、数百台規模の⾞両群を効率的に管理し、遠隔監視やOTA(ソフトウェア更新)を通じて⽇々安全性を進化させています。

4.今後の展望︓「スマート⾃動⾞強国」への加速
 中国政府は2025年までに「中国標準」の技術・インフラ体系を確⽴する目標を掲げていましたが、2026年現在はその舞台を「レベル4(高度⾃動運転)の完全商⽤化」へと完全に移⾏させています。
 武漢市ではすでに24時間体制の完全無人タクシーが定着し、空港送迎や⻑江を渡る⻑距離ルートも実現しています。上海においても、浦東エリアでの実績を基に、より広範囲かつ複雑な市街地での無人化が進む⾒込みです。中国は2035 年から2050年にかけて、世界をリードする「スマート⾃動⾞強国」としての地位を確⽴するという⻑期的なビジョンを着実に形にしています。

  以上