東急が導入した“4足ロボット”と米国製Spot、中国勢Unitreeの競争について
- 東急電鉄で電⾞の整備に4⾜歩⾏ロボットを導⼊したというニュースを電⾞内のサイネージ広告で⾒ました。このロボットは米国製ですか︖中国製ですか︖また、現状は、米国と中国のどちらが4⾜ロボット分野で進んでいるのでしょうか︖
-
東急によると、導⼊したのはアメリカのボストン・ダイナミクス社(Boston Dynamics)が開発した4⾜歩⾏ロボット「Spot(スポット)」です。(https://www.bostondynamics.com)
Spot は、犬のような形をしたロボットで、階段を上り下りし、狭い場所を⾃律的に移動してカメラやセンサーで点検を⾏うことができます。今回は線路や⾞両の下など、⼈が⼊りづらい場所の安全確認を⾏う目的で使われています。
ボストン・ダイナミクスはもともと米軍の研究プロジェクトから生まれた企業で、安定した歩⾏制御や転倒防⽌などの技術では世界のトップを⾛っています。その分コストは⾼く、1台1,000万円を超えることもあります。⽇本の鉄道会社や電⼒会社がこの米国製を選ぶのは、「信頼性が⾼く安全性が証明されている」という点が大きい。もし故障や事故が起きた場合の責任や補償体制も、米国企業の製品のほうが安心できるということでしょう。
一方で、中国勢の追い上げも非常に速い。代表格は、深圳のUnitreeRobotics(宇樹科技)です。(https://www.unitree.com)
Unitree は「Spot の⺠生版」と⾔われるほど構造が似ていますが、特徴は低価格と量産⼒です。最新モデル「Go2」はAIチップを内蔵し、音声で指示を出したり、障害物を避けて⾃動で歩いたりできます。それでいて価格はわずか数十万円から。教育機関や工場、警備現場などで導⼊が進んでいます。
実際、中国ではロボットを「⼈の代わりに働く、新しい労働⼒」として、政府も⽀援しています。AIチップの国産化やセンサー技術の改良で、⾼性能ではないが十分使えるロボットを大量に生産できる国になりつつあります。
国際的な専門家の間でも、両国のロボットの違いはこのように指摘されています。米国は「軍事研究にルーツを持つ⾼精度・⾼信頼モデル」(Hudson Institute報告、2024年)。中国は「⺠生⽤途から発展した量産・AI融合モデル」(SCMP報道、2025年)
したがって、どちらが「進んでいるか」と⾔えば、技術の精度では、依然としてボストン・ダイナミクスが上です。Spotの動きの滑らかさや制御アルゴリズムは、今も他社が追いつけていません。しかし、普及のスピードとコスト面では、中国が圧倒的に速い。ロボットを“⽇常の道具”として社会に浸透させようという政策も後押ししています。
⽇本は今のところ、安全性を重視して米国製を選んでいますが、地方⾃治体の防災やインフラ点検のように「数をこなす」分野では、中国製の参⼊が進む可能性があります。つまり現時点の構図は、性能でリードするアメリカ、普及とスピードで迫る中国。そして⽇本は、安全性と信頼を優先しながら、どちらの技術をどう使うかを⾒極める段階にあります。
ロボットは今や工場や研究所だけのものではなく、社会のあちこちに「静かに⼊り込みつつある新しい労働⼒」です。東急の事例は、その始まりを示す一つの象徴といえます。以上

