権利保護を強化する中国商標の「税関登録(海関備案)」制度

先日、中国で商標登録に成功したところ、他社から税関登録(海関備案)を⾏うとよいとアドバイスを受けましたが、これはどんな制度で、どんなメリットがあるのでしょうか︖


 中国での商標権取得は、貴社のブランドを保護するための重要な第⼀歩です。しかし、権利を確保しただけでは、巧妙かつ⼤規模に展開される模倣品のリスクからブランドを完全に守ることはできません。中国ビジネスの成否は、取得した利をいかに実効的に⾏使し、侵害を未然に防ぐかにかかっていると⾔っても過⾔ではありません。

 中国税関への「税関登録(海関備案)」制度は、この課題に対する極めて強⼒な解決策の⼀つです。これは、権利侵害が発⽣した後に対応する「事後対策」から、模倣品が市場に流⼊するのを国境で⾷い⽌める「予防的防衛」へと、ブランド保護戦略を根本から転換させるための重要な⼀⼿。商標権や特許権などの知的財産権を、あらかじめ中国税関総署のシステムに登録しておく制度のことです。この登録を⾏っておくことで、全国の税関が模倣品などの権利侵害が疑われる物品を発⾒した際に、税関⾃⾝の判断(職権)でその輸出⼊を差し⽌めることが可能になります。

 これは、単なる⾏政⼿続きではなく、偽造品の市場流通を⽔際で防ぐための予防的な権利⾏使ツールであり、中国市場におけるブランド保護戦略の根幹をなすものと位置づけられています。

税関登録の具体的なメリット

税関登録には、主に以下のような⼤きなメリットがあります。

メリット①︓税関が「職権」で模倣品を発⾒・差押えしてくれる

税関での知的財産権保護には、登録の有無によって2種類の方法があります。

  • 職権による差押え(事前登録あり)︓税関が日常の監視業務の中で侵害の疑いがある貨物を発⾒し、権利者に通知した上で、主体的に差押えなどの措置を講じます。権利者は⾃ら市場を監視する⼿間が省けます。
  • 申請による差押え(事前登録なし)︓権利者⾃⾝が市場調査などで侵害品を発⾒し、税関に対して差押えを申請する必要があります。発⾒した時点では、すでに⼤量の偽造品が市場に流通している可能性もあります。このように事前に録しておくことで、権利者の負担を⼤幅に軽減しつつ、より迅速かつ効果的な対策が可能になります。

このように事前に登録しておくことで、権利者の負担を⼤幅に軽減しつつ、より迅速かつ効果的な対策が可能になります。

メリット②︓コスト効率が劇的に改善される

  • 担保⾦の軽減︓
    o 登録がない「申請による差押え」では、貨物の価値に相当する⾼額な担保⾦の提供を求められることがあります。
    o ⼀方、登録がある「職権による差押え」の場合、提供する担保⾦が貨物の価値に応じて減額される場合があり、権利者の⾦銭的負担が軽くなります。
  • 専門家費用の削減︓
    o 侵害が起きてから事後的に「輸⼊差⽌申⽴」などを⾏う場合、1件あたり数十万円単位の専門家費用が発⽣することもあります。税関登録の費用はその数分の⼀で済み、権利侵害の発⾒と初期対応の負担を権利者から税関に移転させることで、知財保護活動のコスト効率を⼤幅に⾼めることができます。

メリット③︓強⼒な抑⽌効果と情報収集

  • 抑⽌効果︓税関に権利が登録されているという事実⾃体が侵害を企てる者に対する強⼒な抑⽌⼒となります。
  • 情報収集(インテリジェンス)︓万が⼀、差押え事案が発⽣した場合、権利者はその通知を通じて、侵害品の販売業者や輸出⼊業者を特定する機会を得られます。これらの情報は、侵害ネットワークの全体像を把握し、製造拠点や流通チャネルを特定するための貴重な情報となり、より広範な権利⾏使の策定に役⽴ちます。

メリット④︓正規流通品の円滑な通関(ホワイトリスト制度)

 税関登録の際には、正規のライセンシー、製造業者、輸出⼊業者などを「ホワイトリスト」として登録することができます。これにより、正規のサプライチェーンに属する貨物が税関の監視活動によって不必要に遅延する事態を防ぎ、スムーズな通関を確保できます。商標権の税関登録は、比較的低コストでありながら、中国全土の税関を味方につけ、模倣品の流通を⽔際で防ぐことができる非常に強⼒なブランド保護戦略です。中国でのビジネス展開において、⾃社のブランド価値と消費者の安全を守るため、検討してみてください。

※中国商標税関登録サービス
https://chinawork.co.jp/service/zeikan_touroku/

  
以上