⽇本産抹茶の中国向け輸出は可能か︖
- 現在、静岡県産および京都府産の抹茶の中国への輸出を検討しています。
しかし、農林⽔産省からは「輸出は難しい」、貿易会社からは「輸出できる」、中国在住の⽇本⼈からは「輸⼊はできないのでは」と、それぞれ異なる回答があり、何が正しいのかわかりません。⽇本産抹茶の中国向け輸出について、実態を教えてください。 -
⽇本の⾷⽂化を代表する「抹茶」は、海外市場での注目度が年々⾼まっています。とりわけ巨⼤な消費地である中国市場への参⼊を目指す動きが活発化する⼀⽅で、輸出の可否をめぐる情報が錯綜し、現場では混乱が⾒られます。
中国本土・香港・台湾の3地域における輸⼊規制と実際の輸出可否について、以下のとおり整理しました。
1.中国本⼟︓正規ルートは事実上封鎖
結論から⾔えば、現在のところ、静岡県産・京都府産を含む⽇本産抹茶を、中国本土へ正規ルート(⼀般貿易)で輸出することは極めて困難です。
その背景には以下の要因があります︓- 2011年の福島第⼀原発事故以降、中国は⽇本⾷品に対する輸⼊規制を強化。
- 静岡・京都は輸⼊停止10都県には含まれませんが、茶葉等に必要な「放射性物質検査合格証明書」について、⽇中間での制度上の合意がなく、⽇本政府は発⾏できない状況。
- このため、中国税関では輸⼊許可が下りず、農林⽔産省が「輸出は難しい」と案内しているのはこの公式ルートに基づく⾒解です。
⼀⽅で、「輸出できる」という報告も存在しますが、それは香港を経由した個⼈輸送や国際郵便などの“非公式・グレーなルート”であり、いわゆる「⽔客(密輸)」に類する⽅法です。これらは違法性・⾷品衛生リスクが⾼く、企業として採用すべき手段ではありません。
2.⾹港︓「開かれた市場」— 正規輸出が可能
香港は、中国本土と異なる独⾃の通関・検疫制度を有しており、茶葉に関する厳しい輸⼊制限は設けられていません。- 必要な輸出⼊書類を整えれば、静岡県産・京都府産の抹茶も正規に輸出可能です。
- 香港を経由した合法的な販売ルートの構築は、今後の本土市場開拓の布⽯としても有望です。
3.台湾︓「規制緩和進⾏中」— 近く全面的な輸出が可能に
台湾では、⽇本産⾷品(茶葉含む)への輸⼊規制が⼤幅に緩和されています。規制緩和の動き(2025年9⽉現在)
- 2025年9⽉1⽇より、福島・茨城・栃⽊・群⾺・千葉の5県に対する規制撤廃を目指し、60⽇間のパブリックコメント期間を開始。
- 年内にも「原産地証明書+放射性検査報告」の提出義務を廃⽌し、ランダム検査に移⾏する⽅針。
- 過去の検査実績(26万件超すべてが安全基準クリア)を根拠とした、科学的アプローチによる規制緩和。
正しい市場選定とコンプライアンス遵守が鍵
特に台湾市場は、法制度と安全実績に基づく規制緩和が進んでおり、有望な輸出先といえます。
事業者には、違法・グレーな抜け道ではなく、法的に正当なルートでの輸出戦略の構築が強く求められます。
以上