ドイツ系ディスカウントスーパー「アルディ(ALDI)」が中国市場で伸びている︖

ドイツ系ディスカウントスーパー「アルディ(ALDI)」が中国市場で伸びていると聞きました。いま中国では大型小売店はECに押されて苦しんでいると聞いており、この情報には違和感がありますが、実際はどうなのでしょうか


 近年、中国の大型スーパーや外資系百貨店など従来型小売業は、EC(電子商取引)やニューリテールの台頭で苦戦しています。実際、JD.comやアリババは大手スーパー株式を売却し、Sun Art(大潤発)から撤退するなど、オフライン投資を大幅に縮小。多くのチェーンが売上減少や店舗閉鎖に直面し、「オンラインで何でも買える」環境で既存小売の魅⼒は相対的に低下しています。しかし、、ディスカウントスーパーの「ALDI(アルディ)」や「Sam’s Club(サムズクラブ)」など外資系会員制スーパーは人気で状況は違っています。

 ALDI は、1940年代創業の⽼舗で、世界各地に展開しています。中国にはまず2017年に越境EC(Tmall Global)で参入し、2019年6月に上海で最初の実店舗をオープンしました。当初ALDI は“中高級”志向の小型スーパーとして上海で出店しましたが、顧客反応はそれほど高くありませんでした。その後2023年に経営方針を転換し、「高品質・低価格」をコンセプトに掲げて値下げと品質訴求を強化し、上海の中間層を中心に支持を広げています。

  • 低価格志向 – 約500品目以上の商品が9.9元以下に設定されており(例︓ペットボトル⽔1元、衛生用品3.9元など)、徹底した低価格戦略で消費者を引きつけています。
  • 自社ブランド重視 – 取り扱いSKU数は1店舗約2,000点と少数精鋭で、そのうち80%以上がプライベートブランド品です。大量調達と流通コスト削減でコストを抑え、その分価格に還元しています。
  • 品質訴求 – 中国では食品安全が大きな関心事であり、ALDIは「メイド・イン・ドイツ」の信頼感を前面に打ち出しています。ドイツ製品の品質保証イメージで安心感を訴え、低価格でも「品質が悪い」という先入観を覆そうとしています。

 ALDI の中国事業は上海で頭角を現し、2024年末までに上海市内で60 店以上(36Kr報道では65店)に達しています。店舗は住宅地や地下鉄駅近くのコミュニティ型が中心で、買い物利便性も重視されています。2025 年には上海以外に「出沪」を果たし、江蘇省蘇州・無錫などにも出店を開始しており、中国展開を加速させる計画です。実際、2023年の売上は10 億元(約170億円)を超え、2024年には前年の2倍となる20億元近くに達したとされています。このような成⻑ペースは、中国でもハードディスカウント業態が評価された結果といえます。

 一方、中国市場では会員制倉庫型小売(コストコ、サムズクラブなど)も旺盛に伸びており、2023年にはコストコやALDIが店舗数を大幅に増加させました。要するに、中国のスーパーマーケット業界では国内大手が停滞する一方で、会員制・ディスカウント型の外資チェーンが拡大しているのです。ALDIは会員制を導入せず、低中価格志向の一般消費者を開拓しており、上海市⺠には「⽇常使いにはALDI」という使い分けが定着しつつあります。

 中国ではECの普及で従来型スーパーが苦戦するなか、ALDIはドイツ本国のハードディスカウントモデルを現地向けにローカライズして成功例となっています。上海を基盤に「高品質・低価格」戦略を徹底し、現在では上海市内で60店以上、江蘇省にも進出済みで、売上高は急成⻑を続けています。周囲の“苦戦”情報とは対照的に、ALDIは中国の消費者ニーズに適合した形で⾶躍的に伸びており、今後も店舗拡大を加速させる⾒込みです。

  
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