商標の防御登録で出願が拒絶されたら「ダブルアクション」で対抗

「SAKURABA」ブランドでペット用品(第 18 類︓⾸輪・リード等)を中国へ出願したところ、ペット業界とは無関係の中国企業「順達衛星科技有限公司」が全45類を防御的に先取登録している商標「SAKURA-TECH」と類似すると判断され、拒絶通知を受けました。このようなケースで不服審判(再審査)を申し⽴てるべきか、どのように判断すればよいでしょうか。


 このような状況で最も効果的な対処法は、不服審判(再審査)と不使用取消請求を同時に進めることです。中国では、他業種の企業が広い範囲で商標を先取りし、実際には使用していないケース(防御登録)が多く⾒られます。今回も、引用商標「SAKURA-TECH」は衛星通信関連企業によるもので、ペット用品とは取引チャネルや消費者層が大きく異なります。こうした「業界の隔たり」は、審判で「混同のおそれがない」と主張する際の強い材料となります。

 さらに、引用商標が実際に第18類(ペット用品分野)で使われていない場合は、不使用取消請求を申し⽴てることで、相⼿が有効な使用証拠を提出できなければ、その区分での権利を失わせることが可能です。取消請求と不服審判を同時に進めることで、拒絶理由そのものが消滅するか、または「非類似性」をより強く訴えることができ、権利取得の可能性が高まります。コストや⼿続期間についても、両⽅の⼿続きを並⾏して⾏えば全体の時間を短縮でき、最終的な負担も抑えることができます。状況により変動しますので、事前に⾒積もりを確認しながら進めるのが良いでしょう。

 実務上は、審判の際に⾃社での実使用証拠(サンプルや展⽰会資料、発注書など)をしっかり準備し、業界隔離性や独⾃性を⽰すことが大事です。万が一、両⼿続きで解決が難しい場合でも、漢字名や別のロゴ、派生ブランドなどを同時に出願しておけば、ビジネスの遅延リスクを最小化できます。また、中国語のブランド名も併せて確保し、今後の事業展開に備えておくのが理想です。

 総じて、他業種による防御登録に遭遇した際は、単に諦めるのではなく、不服審判と取消請求の「ダブルアクション」によって活路を⾒出すことが中国商標実務の現実的な解決策となります。事前にリスクを⾒越し、複数のブランド防御策を講じておくことも、⻑期的なビジネス成功への近道です。

  
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