2025年上海モーターショーの概況と日本メーカー
- 先日、2025年上海モーターショーが開催されて話題となっていましたが、日本メーカーはどうでしたか︖
-
2025 年4月23日から5月2日にかけて、上海・国家会議展示センターで上海モーターショー「第21回上海国際⾃動⾞⼯業展覧会(Auto Shanghai2025)」が開催された。中国最大、そして世界でも有数の規模を誇るモーターショーとして、今回は過去最多の約1,000社が出展し、展示面積は36万平方メートル以上。来場者数は10日間で延べ101万人を記録し、EV(電気⾃動⾞)や⾃動運転、AIを中⼼に⾃動⾞産業の未来が集結した場となった。
中国政府のNEV(新エネルギー⾞)⽀援政策の後押しもあり、EVやPHEV(プラグインハイブリッド⾞)、⽔素燃料電池⾞などの展示が目⽴ち、内燃機関⾞(ICE)の出展は明らかに影を潜め、単なる「新⾞発表の場」にとどまらず、スマートモビリティとデジタル社会が交差する先端展示の舞台となった。
最大の注目は、電動化とソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)という新潮流。特に中国国内ブランドの技術革新は著しく、BYDは「5分間の超高速充電で400km⾛⾏可能」という次世代バッテリーを発表。NIOやXPengも、次世代電動セダンやSUVに加え、⾃動運転対応のAIプラットフォームを公開した。
また、NEV技術の進展と並⾏して注目されたのが、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)の進化だ。多くの⾞両が大型ディスプレイを搭載し、音声・視線・ジェスチャーによるインタラクションを導入していた。いわば「⾞内がスマートフォン化」する潮流が、今年の上海モーターショーを象徴していたといえる。■各⾃動⾞メーカーの状況
グローバルOEMの存在感も依然として強かったが、今回は地元中国メーカーが技術・デザイン両面で一段と先進性を⾒せつけた。BYDはフラッグシップセダン「仰望U7」を出展し、4モーター駆動による高性能と豪華内装で高級EV市場への本格参入をアピール。NIOはバッテリースワップ方式の普及を推進し、最新モデル「ET9」は高性能LidarとSoC(システム・オン・チップ)を搭載した。Geely傘下のZeekrやLynk & Coも、欧州的な洗練とスマート技術を融合させたモデルで存在感を放った。
「空⾶ぶクルマ」とも呼ばれる電動垂直離着陸機(eVTOL)が多数展示された。一方、欧州勢ではメルセデス・ベンツやBMWが、EVラインアップを刷新しつつ中国市場特化の戦略を強調。SDVプラットフォームやOTA(Over-the-Air)技術への注⼒も目⽴った。「紅旗」の電動垂直離着陸機(eVTOL) ■日本メーカーの状況
今回のモーターショーでは、日系⾃動⾞メーカーも中国市場への対応を強く意識したモデルを披露した。トヨタはbZシリーズの新たな電動セダン「bZ7」を世界初公開。全⻑5メートルを超える大型EVで、中国市場のニーズに合わせたラグジュアリー感と航続性能(CLTC換算で700km超)を兼ね備えている。レクサスは新型「ES」シリーズを発表し、BEV(ES350e)とHEV(ES500e)を同時投入した。
ホンダは中国専用EVブランド「烨(イエ)」から、東風Hondaと広汽Hondaの2社がそれぞれEV「GTコンセプト」を世界初公開。特に広汽Honda GTはAIベースの運転⽀援システムを搭載し、スポーティでスマートなデザインが高く評価された。
日産は新型「アリア」の改良版に加え、電動SUV「Hyper Force」コンセプトも参考出展し、技術⼒とブランドイメージの両⽴を図った。
ただし、日本メーカーの存在感は全体として中国・新興EV勢に押され気味、ローカライズとソフトウェア対応の遅れが今後の課題として浮き彫りになった。日産自動車「Frontier Pro」 ■AIの導入と進化
AI は、単なる⾃動運転を超えて「⾞内体験」の変革にも貢献している。複数のメーカーが、AIによるドライバーの表情分析、感情認識、個⼈最適化されたナビ・エンタメ機能を導入。例えばBYDはユーザーの気分に応じて空調や音楽を⾃動調整する「Mood AI」機能を披露した。また、生成AIや音声AIによる対話型インターフェースも一般化し、クルマがまるで「動く秘書」のようにふるまうケースも多かった。ここでも中国テック企業の台頭が目⽴ち、⾃社開発のAI基盤を持つ企業がソフトウェア競争で優位に⽴っている。
今回のモーターショーを通じて明らかになったのは、「⾃動⾞業界がソフトウェア中⼼に再編される」という現実である。ハードウェアのスペック競争から、UX(ユーザー体験)やエコシステム連携に主軸が移り、プレイヤーの裾野がIT、通信、スマホ、AIなどへと広がっている。
日本メーカーにとって、中国市場での成功は、将来のグローバル競争⼒を左右する重要な要素となりつつある。専門家は、OTA(Over-the-Air)対応、クラウド連携、コネクテッドサービスといった「デジタル競争⼒」の強化が急務でありその実装スピードこそが今後の競争を左右すると指摘している。
以上