「東北海陸⼤通路」の建設と日本企業への影響

中国の東北地域で、「東北海陸⼤通路」建設が始まり話題となっていることを聞きました。どのような計画なのか、教えてください。

⽇本では、あまり中国の東北地域が話題となることはありませんが、この地域は物流分野で重要な役割を担っており、⽇本企業のビジネス活動にも影響を与えています。
「遼寧省沿海経済圏」は、東北地域の発展をけん引し、遼寧省の新たな開発の要となってきました。その中、⼤連市は経済成⻑を加速させており、都市の総合⼒を⾼めて 3 年間で“GDP1兆元(約 20 兆円)都市”に飛躍させる計画を発表しています。
今年 3 月には、⼤連港コンテナターミナルで⼤連港からオーストラリアへの初の直⾏便が正式に運航を開始しました。これは、RCEP 協定(※)発効後、初めて開設した RCEP 加盟国への直⾏便です。

※RCEP (アールセップ)協定は、2022 年 1 月 1 ⽇に発効した、東アジア地域包括的経済連携協定のことで、⽇本、中国、韓国、オーストラリア…等、計 15 ヵ国が参加している。これにより、国内総生産(GDP)の総額で世界の約 3 割を占める巨⼤な経済圏が誕生するといわれている。

◆東北海陸⼤通路の建設

「⼀帯⼀路」建設の重要な接点である遼寧省は、「対外開放の新境地を建設し、海陸通路の解明に全⼒を尽くす」ことを今後 5年間の主要課題として「対外開放の新境地の建設と、海陸通路の変⾰」を掲げています。遼寧省は、「東北海陸⼤通路」建設に関する省レベルのタスクフォースを設置しており、今年は既存の輸送インフラを整備して、⼤連-瀋陽-満洲⾥-モンゴル-ロシア-ヨーロッパの主要通路の能⼒増強とロシアのベレイラスト海上ハブ港の建設を促進しました。また、遼寧省経由でヨーロッパに届く、⽇本・韓国製品の総量を倍増する計画を実⾏し、年間を通して、中国-ヨーロッパ鉄道本数を 10%以上増加させる計画を発表しました。

⽇本が初めて「⼀帯⼀路」構想に参加したことで、2021 年 1 月にはトヨタ⾃動⾞のトランジット輸送プロジェクトが⼤連港⾃動⾞ターミナルで始まりました。そして中国初の東アジアから中央アジアへの商⽤⾞⽤新陸海輸送通路が正式に開業し、初年度の商⽤⾞輸送は 4,000 台超になりました。2021 年には、ベレイラスト物流センターのコンテナ量は 12
万 TEU を超え、前年⽐ 155%増でした。⼤連国際物流を担う「東北海陸⼤通路」の建設は、多次元・多ルートの物流経路を提供し、経済発展を推進して、産業構造の調整と最適化を促進することが期待されています。