2021 年の中国を考える(新春寄稿)

新年早々、首都圏は緊急事態宣言を再発令となりそうです。弊社は日頃から中国と連絡を取り合ってい
るため、どうしてもコロナ禍の状況を比較してしまうというか、比較できてしまいます。とくに弊社の現
法がある上海のことはリアルタイムに情報が入ってくるので、上海の日常生活がほぼ通常に戻っているこ
とを実感するわけです。

■上海のコロナの状況

中国では、スマホのQR健康コードが必須になっていて、様々な施設の入り口で提示を求められます。
⾚⾊は「隔離」、⻩⾊は「医学観察」、緑⾊は「通行許可」で、緑⾊でないと普通に街を歩くことはできません。基本的には、このQR健康コードがコロナ感染の管理で最大限に活用されています。

例えば、昨年 11 月 9 日、上海の浦東空港で、上海市としては 5 ヵ月ぶりとなる新規感染者が発見。そして同月 20 日に浦東空港の貨物センターで働く従業員の感染が発覚し、計 7 人ほどの空港関係者に陽性がでました。それを受けて上海市は、空港関係者のQR健康コードをいきなり⾚⾊にして、強制的に大規模なPCR検査を実施。22 日夜までに検査を受けた約1万 7000 人は全員陰性だったと伝えられました。日本では考えられない強引な抑え込み⽅ですが、こうした措置を⺠衆はどのように思っているのでしょうか。

昨年 11 月 29 日に上海国際マラソンが開催され、成功裏に終了しました。コロナ禍にもかかわらず、全国から参加申込者が殺到し、申込者は 12 万人に上ったといいます。しかし最終的には、フルマラソンのみの出場者 9000 人に絞り込んでの開催となりました。

新型コロナウイルスはまだ完全には終息していないにもかかわらず上海マラソンへの申込者が減らなかった理由は、徹底した感染対策が行われるという安心感があったからだ言われています。
また上海市では昨年 11 月 5〜10 日の 6 日間、「中国国際輸入博覧会」が開かれました。一昨年(2019 年)は筆者も参加し、その人の多さに圧倒されたのを思い出します。昨年は現地にいる弊社のスタッフが参加しましたが、コロナ禍で海外からの中国への渡航がままならず、開催できるか懸念されてたにもかかわらず、展示面積は前年比 3 万平⽅メートル増の 36 万平⽅メートル、世界 100 カ国余りから約 2800 社が出展し、概算の成約金額は前回を 2.1%上回る 726 億 2000 万米ドルになりました。

このように、中国政府のコロナに対する厳しい抑え込みは、市⺠の生活に安心感を与え、経済の活性化に貢献していると言ってよいかと思います。

■外国企業や日本企業の動向
外国企業の中国におけるビジネスは、結果的に昨年はとても活発だったようです。
北京に駐在している知人から、中国各地で多くの博覧会が開かれ、ビジネスマンは中国国内を活発に動き回っている様⼦を伝えてきました。日本企業に関しては北京、成都、蘇州、⻘島などに日本産業園が作られ、日本企業の誘致、特に電⼦商取引や水素自動車、アニメーション、環境などの商品や企業の誘致が行われました。

ここで注目したいのは、政治的な対立が強まっている米国や豪州の企業も中国への売り込みに懸命だったという事実です。米国は、金融の 100%現地法人ができるようになることや、外資企業の進出や中国企業の改革の必要性が高まる、中国の農業関税引き下げが強まるということで、銀行、コンサルティング会社、穀物・牛肉メーカーなどが博覧会で大きなブース出展していたとのことです。また、米国企業の多くのトップがインタビューに出演して、中国市場の可能性や中国の社会問題への貢献などを語っていました。

日本の企業も、日本国内では米中関係を気にしながら、中国との協力を全面的に宣伝することを避けながらではありますが、中国の実際の現場では、真剣に中国政府や中国企業と協力して中国での拡販を進めていたのが現状です。

いずれにしても、今年も中国が世界から、よい意味でも悪い意味でも大きく注目されることは間違いありません。中国が⻑期的な政策で重視しているのは、成⻑のキーワードである「テクノロジー」や「イノベーション」。これらを発展させることで社会的な課題を解決していこうという気概を感じます。しかしながら「テクノロジー」や「イノベーション」の発展は、経済のみならず、軍事力や文化にも影響し、国際競争力を決定する要因となってくるので、日本にとっては複雑な状況となってきます。安全保障は米国に、ビジネスは中国に寄らざるを得ない日本の立ち位置を理解しておく必要があるでしょう。中国情勢を見誤ることのないよう、弊社を存分に活用して、普段から現場の情報に敏感になっていただければ幸いです。

桜葉コンサルティング株式会社
代表取締役 遠藤 誠