晶合集成(ネクスチップ)躍進、中国ファウンドリ成⻑モデルと国家⽀援の実像
- 中国のファウンドリ企業「晶合集成(ネクスチップ)」がこの数年で急成⻑を遂げたと聞きました。その背景にはどのような戦略や中国特有の⽀援体制があるのでしょうか︖また他の中国半導体企業と⽐べてどのような特徴がありますか︖
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晶合集成(ネクスチップ)は、ここ数年で中国半導体業界において際⽴った成⻑を遂げたファウンドリ(受託製造)企業の一つです。特に2020年から2022年にかけては、ディスプレイ駆動IC(DDIC)の世界的な需要増を背景に急速な拡⼤を⾒せました。2022年には売上⾼1,005億元、純利益30.45億元を記録するなど、成⻑率では国内最⼤手の中芯国際(SMIC)を凌ぐ勢いでした。
ただし2023年は、DDIC市場の調整局面により売上が約27%減少、純利益も約2.12億元へと激減し、成⻑の踊り場に⽴たされました。しかし、2024年には早くも売上⾼924.9億元・純利益5.33億元へと回復し、再び成⻑軌道に乗り始めています。これは製品構成の⾒直しや⾃動⾞向け半導体、CMOSイメージセンサー(CIS)分野への展開が功を奏したためです。
他の中国主要ファウンドリ企業と⽐較すると、晶合集成は「ニッチな専門分野に特化したスピード成⻑型」と位置づけられます。たとえば中芯国際(SMIC)は売上⾼4,525億元、⽉産能⼒80万枚以上の⼤規模ファウンドリで、技術範囲も広く、政府からの直接⽀援も圧倒的です。一方、華虹半導体はパワー半導体や組込み型メモリなど成熟ノードに特化し、安定性の⾼い収益モデルを展開しています。
その中で晶合集成は、世界シェアNo.1のDDICファウンドリとして「専門性と集中戦略」で差別化を図っています。ただしこの特化モデルは、顧客・製品の依存度が⾼く、市況の変動に業績が直結するリスクも孕んでいます。そこで同社は現在、CMOSイメージセンサーや⾞載向けIC、OLEDディスプレイドライバなどへの事業多角化を急ピッチで進めています。
中国独⾃の⽀援体制も、同社の急成⻑を下⽀えしています。第一に、設⽴当初から安徽省合肥市政府が深く関与し、資本・用地・税制優遇など包括的な⽀援を提供しています。第二に、2023年の上場時には約100億元を調達し、2024年には国有系15⾦融機関が95.5億元の追加出資を⾏いました。これにより巨額の設備投資が可能となり、製造能⼒の拡張を継続しています。第三に、合肥市は「芯屏汽合(半導体・ディスプレイ・⾃動⾞の統合開発)」という産業政策を掲げ、近隣に主要サプライヤーと顧客が集積する理想的な環境を形成しています。これらの⽀援は、中央政府の国家集成電路産業基⾦(通称「⼤基⾦」)による戦略的投資とも連動しており、中国全体として半導体産業の国産化を後押ししています。実際、晶合集成の2023年の純利益のうち約75%は非経常的な政府補助⾦等によるものであり、⾚字回避にも⼤きな役割を果たしました。今後の課題は、こうした公的⽀援に頼らずとも持続可能な収益モデルを確⽴できるかどうかです。技術競争が激化する中で、コスト競争⼒と差別化された技術プラットフォームを武器に、如何に“ポストDDIC”市場を開拓していけるかが注目されます。
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