中国の商標出願で拒絶されたときの対処法(2)

当社はサプリメントブランド「Sakuraba」を中国(第5類)で出願しましたが、2025年6⽉に中国国家知識産権局(CNIPA)から拒絶通知を受領しました。通知によれば、既存の登録商標「健腸美粧 SAKURAVIE(2021年登録)」と外観・呼称・語意および指定商品で類似し、一般消費者が出所を混同するおそれがあると判断されました。どう対応したらよいでしょうか。


 中国での「Sakuraba」(第5類︓サプリメント・医薬品等)の商標登録が拒絶された場合の理由と、その対応策を整理します。

1.拒絶の理由
CNIPAは、既存の登録商標「健腸美粧 SAKURAVIE」(2021年登録)と「Sakuraba」が外観・発音・意味・指定商品(いずれも第5類)で類似し、消費者に混同を招くおそれがあるとして、商標法第30条等に基づき拒絶と判断しました。



2.実際に取った戦略︓「不服審判」と「3年不使⽤取消審判(撤三)」の併⽤
拒絶に対して、不服審判のみ(「似ていない」と主張)で逆転を狙うのは現実的に難しく、成功率も限定的(20~30%程度)です。
そこで、「守り」と「攻め」を組み合わせた⼆段構えの戦略が有効です。

  • 拒絶査定不服審判(再審請求)
    拒絶決定が確定するのを防ぎ、「係争中」の状態を維持します。
  • 3年不使⽤取消審判(撤三)
    引用商標が3年以上使われていない場合、その登録を取り消すよう申し⽴てます。今回のケースでも引用商標の使用実態は確認できませんでした。

 これらを並⾏して進め、不服審判中に「引用商標取消しの結果を待ってほしい」と審査官に申請します。もし撤三が認められて引用商標が取り消されれば、「Sakuraba」の拒絶理由そのものが消滅し、登録への道が開けます。

3.部分登録の可能性も
中国では、不服審判の過程で、指定商品や役務がすべて重複していなければ、一部について登録が認められる場合があります。現地では「拒絶理由が明確になった段階で部分登録を目指す」という⽅針も一般的です。

4.審判請求時の戦略ポイント

  • 多角的な非類似主張
    「音」「形」「意味」の側⾯から論理的に非類似性を主張。
  • 引⽤商標の使⽤実態への着目
    拒絶理由通知を精査し、引用商標の指定商品・役務に実際の使用がない等、弱点を⾒極めて反論します。

5.今回の教訓と今後の知財戦略

  • 中国の商標審査が拒絶された場合でも、その後の知恵と戦略が成功のカギ。
  • 使われていない商標を調査し、取消申⽴てで障害を排除する積極策は、ブランド防衛にも有効。
  • 実使用の有無まで踏み込んだリスク管理は、今後の知財戦略に不可⽋。

 中国での商標登録は、一度の申請で順調に進むとは限りません。むしろ拒絶通知を受けてからこそ、真の戦略が問われます。「守り」の抗弁だけでなく、「攻め」の取消申⽴てなど多角的に対応することで、ブランドの未来を切り拓くことが可能です。中国商標制度も近年変化が著しいため、最新の実務動向を把握しつつ、使われていない先⾏商標には積極的な調査・取消申⽴てでリスクを管理する発想が、今後ますます重要になります。

  
以上