中国企業との契約を日本国内で締結する場合の注意点

 当社では中国企業との委託生産について、数年前に日本の弁護士事務所に作成してもらった契約書で、日本国内で締結しています。原材料はすべて現地で調達し、当社の意向通りに生産された製品を輸入して買い取っています。
 しかし、先日知人から、その契約で問題がないか中国の専門家に確認したほうがよいとアドバイスされました。中国企業との契約を日本で締結するのは問題があるのでしょうか。

 貴社が締結している契約書では、「本契約の事項および条件、全ての関連商取引は、日本法に準拠し、これに従って解釈される。」となっています。
 中国では、契約については「中国契約法」に準拠する必要があります。中国契約法は 428 条の条文で構成されており、商業取引において、契約当事者の利益、権利及び市場取引の保護を図るための法律です。
《中華人⺠共和国合同法》
http://www.npc.gov.cn/zgrdw/npc/lfzt/rlyw/2016-07/01/content_1992739.htm
 
 ただし、日本企業と中国企業が締結する契約は渉外契約となり、契約紛争の処理に適⽤する準拠法を選択することができます。

中国契約法 126 条 1 項︓
 第⼀百⼆⼗六条 涉外合同的当事人可以选择处理合同争议所适⽤的法律,但法律另有规定的除外。涉外合同的当事人没有选择的,适⽤与合同有最密切联系的国家的法律。
 
 第百⼆⼗六条 渉外契約の当事者は、契約紛争に適⽤される法律を処理することを選択することができるが、法律に別途規定がある場合は除外する。渉外契約の当事者に選択肢がない場合は、契約と最も密接な関係のある国家の法律を適⽤する。

 すなわち、日本国内法に準拠して契約を締結することは可能ですが、もし委託生産であれば、中国で締結され、生産が中国企業であり、履⾏地も中国となるので、中国法が最も密接な関連のある国家の法律となるはずです。
 貴社の契約書の内容は、製造委託契約ではなく、⼀般的な売買契約となっているので日本法に準拠することでも通じたようですが、国外からの原材料の供給がないこと、また中国国内販売がないという前提で締結されているので、これまで問題はなかったのだと思います。その代わり、規定の中の 「製造の規程・材料または構造の変更」のような生産に関連する条項は効⼒がないはずです。
 また、日本法に準拠しているのであれば、日本の裁判所を管轄裁判所となりますが、日本の裁判所で得た判決は中国で執⾏することはないと思ったほうがよい。したがって、もし委託生産契約にするなら、やはり現地法人を設⽴して、そこからの製造委託とする必要があります。

 

以上