その11.中国語において決定的に重要な「発音」
−なぜ「田中式ピンイン表記法」なのか?
日本語の世界も、中国語の世界も中に入れば入る程、絢爛豪華(鮮艶奪目)で、奥深く(神奇奥妙)、多種多彩(五花八門)ですが、それはメイン・ディッシュとして後のお楽しみにとっておき、ひとまずオードブルともいうべき「発音」の世界、即ち中国語入門の世界へと戻りましょう。
中国語において発音は極めて重要です。
中国語において発音を軽視することは、危険極まりないことです。
なぜなら、以下の例が示すように、発音が正しくなければ基本的なコミュニケーションすら成り立たないからです。
また、これは中国語を学習する日本人に固有の問題と言うわけではありません。
匈奴であろうが、契丹人であろうが、韓国人であろうが、日本人であろうが、アメリカ人であろうが皆同じです。
「発音」の習得が中国語学習の「要」です。
特に「入門」段階においては、「発音」が全てと言っても言い過ぎではない位です。
<例1>
「この りょうり、 おいちい ですね。」
「この りょうり、 おいし ですね。」
「この りょうり、 ういしい ですね。」
「この りょうり、 おいchiい ですね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・ 」
(chi は中国語の音です)
この文章を聞いた日本人は、「ちょっと変だな」と思いつつも、大方の人は、これは
「この りょうり おいしい ですね。」
の意味だと理解するでしょう。
"zhe ge cai ,hao zhi(1)."
"zhe ge cai ,hao ji(1)."
"zhe ge cai ,hao qi(1)."
( zhi(1) は 第1声のzhi を意味しています )
この文章は、正しくは、
"zhe ge cai,hao chi(1)"で、「この料理、おいしいですね。」という意味です。
上記の間違った発音を聞いた中国人達はどう反応するでしょうか?
恐らく困ったような顔をするでしょう。四声が正しく発音されていればいる程、意味不明でその場の情況から「おいしい」という意味に辿りつくまでにはかなりの時間を要するでしょう。
発音を基礎からちゃんと正しく学んでいない日本人は、とかく"hao
ji(1)=ハオ ジ"となりがちです。なぜかと言えば、日本人の耳には"chi"は「ジ」と聞こえるからです。
「ジ」と発音されたら、多くの中国人は「鶏」の文字を連想するに違いありません。
つまり、「おいしい」ではなく、「良質のチキン(好鶏)」になってしまうのです。
「この料理に使われている鶏肉、良いものよね。」等になってしまうのです。
後で詳しく述べますが、ここに中国語の発音の「イ、ロ、ハ」を知らない日本人が外国語はなんでもネイティブに習えば良いやと考えて最初からネイティブについてしまう場合の落とし穴(陥穽)があります。
学ぶ側にとっての落とし穴とは「耳に聞こえたまま発音すれば良い」と信じ込んでしまうことです。
教えるネイティブの先生にとっての落とし穴とは「私が発音した通りに発音すれば良い、まねをしさえすれば良い」と信じ込んでしまうことです。
日本人が中国語の発音の第一歩を学ぶ場合には、決して日本人の「耳」だけを頼りにしてはいけないのです。
日本人の耳は日本語の音に習熟し過ぎているのです。
話が脇道にそれましたが、この例が示すように、中国語において「発音」が持つ意味は日本語のそれとは比べものにならない程重要なのです。
このことはいくら強調しても強調しすぎることはないでしょう。
(続く…)
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