その9.こんなにも違う日本語と中国語(3)
今までは日本語と中国語の距離を知るため日本語を中国語或いは中国人から遠ざけてみましたが、今度は中国語を意識的に日本語或いは日本人から遠ざけてみましょう。一緒に前掲の「中1」の世界に奥深く足を踏み入れてみましょう。
中国人Kと中国語を全く知らない日本人Lが東京のとあるホテルで筆談をしています。
中国人K:我有一個朋友要従北京来,我感到非常高興。
日本人L:「高興?」意味不明
中国人K:「快活」
日本人L:??
中国人K:「歓喜」 或 「喜悦」
日本人L:Oh! 明白、了解
中国人Kが中国語の口語体で話を始めると日本人Lは日本語ではお目にかからない漢字の組み合わせである「高興」にとまどってしまいます。これを、より文語的古典的な表現、「喜悦」としてもらうと俄然通りが良くなります。一発で意味が通じます。まさにコミュニケーションが成り立ち、気脈を通じさせることができます。
これを文語で始めてもらうとどうでしょうか?
中国人K:有朋自京来,不亦楽乎?
日本人L:誰?
中国人K:……
もっと通りが良くなります。
アメリカ人やロシア人やフィリピン人などが中国語を初歩から勉強する場合には通常口語から入りますので、これらの国の人々にとっては「高興」は特別難しい言葉ではなく、むしろ「喜悦」とか「不亦楽乎」などの文語的な表現の方が相当勉強しないと辿りつけない難しい表現だと映るに違いありません。
ところが、日本人だけは例外で、中国語の口語が難しく感じられるという現象が見られます。まさに、日中間の特殊な関係の一側面と言えるでしょう。
中国古典の世界は広大無辺(一望無際)です。ですから、それを極めることは容易なことではありません。しかしながら、日本人にとってはもう一つ征服しなければならない世界があるのです。それが「中国語の口語世界」です。「中1」の中には、「中国古典の世界」と「中国語の口語世界」が混在しているのです。(それぞれ、「中1古典」「中1口語」と名付けたいところです)
今から中国語を身に付けようとする日本人は、先ず「中国語の口語世界」は日本語から最も遠いところにあるのだということを基本認識としてしっかり頭に刻み込んでおくことが肝要です。
もう一つ例を挙げてみましょう。
同じく筆談で、
日本人Y:価格幾?
中国人E:便宜
日本人Y:??
500円?
中国人E:800円
日本人Y:高!!
中国人E:不貴
日本人Y:??
もし、日本人の先輩達が、次のような漢字の使い方(読み方)を一般的なものとして残してくれていたら、現代中国語に近く便利だったのにと思うのは私だけでしょうか?
価格が高い を 価格が貴い(たかい)
価格が安い を 価格が廉い(やすい)
(…続く)
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