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 100万人の中国語


その63.なぜ、「これなら出来る!・・・」か?(11)  

@「発音」の話が続きます。もうしばらく辛抱お願いします。

なぜ2時間でピンインが読めてしまうのか?
それは、次のような理屈によるものです。

平均的日本人が区別できない音のみを取り出して聞かせ、発音させ、自分の耳にそれまでは“未知(未聴)”であった音を覚えさせ、なお且つ、その音を耳から取り入れ、それに対応するピンインを同時に目から取り入れ、頭の中で結合させることが出来れば、「カタカナで表せない音=日本語に無い音」のピンインが読めてしまうのです。
このような<耳>と<目>と<頭>による学習を効率的に行うために考案されたものが、「田中式二色刷りピンイン表記法」です。

この方法が有効であるかどうか、私は長い間、実験出来ずにいました。10年程も、ほったらかしにしていたのです。が、ある時、
それを実験してみることを思い立ち、全く中国語の音を知らない日本人に試してみました。すると、驚いたことに、私の想像をはるかに超えた効果を挙げたのです。

「二色刷り」にする際、私は、全く自分の経験値を元に色分けしました。言葉を変えて言えば、<自分の耳>に全幅の信頼を寄せて、この作業を続けたのです。結果、幸いなことに、私の耳は、日本人の耳として極めて標準的な耳であることが証明されました。即ち、赤色に色分けされた音は、全て平均的日本人には聞き分けられない音であることが証明されたのでした。

もし、この段階での色分けが間違っていたら、どうなっていたでしょうか? 恐らく、学ぶ者を納得させることは出来ず、ただ混乱を惹き起こすだけに終わったに違いありません。

その後、アカデミックな言語学の本を紐解いていて、現代言語学の祖、言語というものに真正面から取り組み、言語について深く深く思考を重ねたソシュールに出会いました。なんと、1913年に亡くなったソシュールが、このことに理論的根拠を与えてくれていたのです。

それは、こういうことです。
以下、「コトバの謎解き ソシュール入門」(町田健、光文社新書)p。75、p。76より引用させていただきます。

「こういう誰もが同じものだと思う音の集まりのことを、ソシュールは、『音素』と呼んでいて、この用語は現代言語学で使われているのと大体同じ意味です。そして、音素に対応して、私たちの頭の中で作られる何らかの表象を『聴覚映像』と彼は名付けています。」

「・・・・、ある言語を使って共通に理解し合える人々は、その言語にどんな音素があるかをきちんと知っているはずです。ところがこの音素というのは、先にも述べたように、ある範囲の具体的な音の集合体なのですから、実際に発音される音とは違います。つまり、ある言語の音素を知っている人は、現実に聞いた具体的な音が、どの音素の中に含まれるのかを正しく認識できるのだというわけです。」

 
 (続く…) 

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