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 100万人の中国語


その138.二段ロケット式外国語学習法(20)
 
 私を含めた日本人が、とかく、「第一目標」=「最終目標」、あるいは、「第一目標」=「限りなく最終目標に近い目標」という設定の仕方をしてしまうのは、なぜでしょうか?

 私は、その一大原因として考えられるのが、母語である日本語が余りに統一されているために、言語表現に余り不自由することがなく、それ故に、勢い話す言葉が外国語の場合であっても、「カタコト」であったり、幾つかの単語を知っているだけという自分を想定しにくいのではないことによるのではないかと推測します。

 1974年、私は台湾に中国語研修生として渡り、中国人社会の中に投げ込まれたのですが、その際に、様々な「カルチャー・ショック」を受けました。その中の一つに、「家庭内の言語状況」というのがありました。それは、中国語の先生と下宿先おばさんの話です。

【中国語の先生の話】
 お父さんは標準語が話せないので、何を言っているのか良く分からない。お母さんは、多少理解できているみたいだ。お母さんと子どもたち(私達)は、外省人なので、家庭でも、標準語(国語)を話していて意思疎通が出来る。街に出ると、台湾語が主流なので、理解できないことが多い。

【下宿先のおばさんの話】
 私達夫婦は、台湾語と日本語が出来るが、標準語(国語)は、苦手だ。子供達とは、台湾語で会話しているが、子どもに聞かせたくない話は、日本語でやるようにしている。同居中の長男の嫁は、客家人で、標準語(国語)、客家語、台湾語が出来るが、彼女のご両親が訪ねてきた場合、会話は標準語(国語)でやるしかないので、お互い、大変苦しい。テレビの標準語(国語)は、最近、かなり聞きとれるようになって来た。

 いかがでしょうか?

 日本の状況とは、まさに雲泥の差ですよね。

 先程映画館で見て来た「ソルト」という映画に、こういうセリフがありました。
 
A: How good is his English? (彼の英語は?)
B : Passapable, not great.  (まあまあ合格だが、上手くはないな)

 アメリカ人の場合、“passable”の英語というのは、どういう基準に基づいているのでしょうか?

 上述の1974年の台湾のような社会であれば、その基準は、かなり、低めの基準にならざるを得ないと思われますが、日本人の場合、どうしても、この“passable”という基準が、高めに設定されてしまうと思うのです。

 そして、これが最も強調したい点ですが、日本人の場合、自分が外国語を学ぼうとする際にも、どうしても、最初から、かなり高めの目標設定をしてしまうのではないかと思われるのです。例えば、

「ペラペラ話せるようになる」
「ネイティブに間違えられる位になる」

という風に。

(続く)
 

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