第114号 「新型コロナで需要爆発! Zoomの「開発は中国、市場は北米」とは!?」

私たちのビジネスライフがこの数ヵ月で激変しています。
新型コロナウイルスの影響でオンラインを利用した会議やセミナーが日常化しつつある。
在宅勤務や遠隔授業、友人間のコミュニケーションで世界的に急速に普及しているのが、オンライン会議システムのZoom(米国カリフォルニア州サンノゼ市)です。
このZoomは米国企業ですが、創業者が中国生まれの米国籍であるエリック・ユエン (袁征)です。
2020年3月のユーザー数は2億人と、なんと数カ月で20倍にも増え、一時はセキュリティ上の問題が話題となりましたが、その危機も乗り越え、ユーザー数の増加もいまも衰えていないようです。
今回は、いま注目を浴びているZoomについて、整理してみたいと思います。(今回は、内容が豊富なため、少々長文になっています)

❏Zoomを創業した袁征(エリック・ユエン)は、1970年、中国山東省泰安市生まれ。山東鉱業学院(現・山東科技大学)卒業後、米国にわたり、その後、米国籍を取得。94年、勤めていた会社の出張で日本に滞在していた際、来日したビル・ゲイツの講演を聞き、感銘を受けて米国行きを志す。
だがその後、8回にわたって、アメリカ行きのビザをトライするが拒絶され、9回目にしてようやく、1997年にビザを取得。憧れのシリコンバレーに足を踏み入れた。

袁征は、ネット技術には自信があったが、英語がまともに話せなかった。そのため、シリコンバレーのアメリカ企業に就職できず、しかたなく中国系の朱敏、徐郁清夫妻が現地で興したWebEx(網訊)という小さな会社に就職。ビデオ会議のソフトを扱う会社で、まだ社員は十数人しかいなかった。
2007年、WebEx社が32億米ドルでシスコに買収され、2011年、シスコを離れ、Zoomを創業、40人のエンジニアが袁征と共に起業に参加。WebExに入社以来、15年目、すでに41歳になっていた。

❏製品としてのZoomが世に出たのは創業の翌年、2012年。
Zoomは教育界に強く、全米の大学ランキング上位200校の約95%がZoomを導入。
企業ユーザーは13年9月には4500社に達し、14年には3万社を超え、15年に17万社、16年に45万社と急成長、17年には70万社となり、19年4月、ナスダックに上場。
公開価格の36米ドルは初値65米ドルをつけ(終値62米ドル)、時価総額は160億米ドルに達した。
最近は個人ユーザー数も増加し、19年末には1000万人、新型コロナウイルスの感染が広がった20年3月には2億人に達した。

❏Zoomのビジネスモデルの特徴は、開発コストの低さ。
米国企業で、売上高の8割以上は北米にも関わらず、開発拠点の中核は中国国内にあり、「開発は中国、市場は北米」というビジネスモデル。
会社設立直後の2011年9月、中国の安徽省合肥市の開発区に初めての開発拠点を設置、現在も約500名の体制で開発業務い、そのほか江蘇省蘇州市や浙江省杭州市にも開発の拠点やオフィスがある。
一方で米国国内を中心とするセールスの体制には力を入れており、総売上高の半分以上をセールスと本社などの管理経費に投じている。
同社は「社員全員がセールスパーソン」という方針を掲げ、どんな職種、どんなポジションでも自社の製品のセールスをする義務がある。

Zoomのとはどんな企業なのか
中国生まれがつくった「中国らしくない会社」
https://wisdom.nec.com/ja/series/tanaka/2020042401/index.html

■ビジネスのヒント
Zoomは、あくまで固定ユーザーを重視し、製品の競争力を着実に上げていくことで、地道にシェアを広げていくタイプの泥臭い経営でここまできました。そうしているうちに新型コロナという想定外の事態が出現し、個人ユーザーの需要も爆発した、先見性と幸運に恵まれた会社といってよいでしょう。
しかし、今回、注目したかったのは、Zoomの中国との関係です。
米中貿易戦争、また、新型コロナをめぐって、米中政府が火花を散らす中においても、Zoomは、「開発は中国、市場は北米」というビジネスモデルで急成長しています。
米中経済は相互に依存しており、表現は難しいですが、米国籍の中国企業という姿が浮かんできます。
これまでは中国は、生産拠点としての安価な人件費で成長してきましたが、いまは安価な研究開発力で優位に立っているとみることもできます。
その様子を上記レポートでは、以下のように説明しています。
合肥地域の若手開発エンジニアの年収は3万5000米ドル程度。
一方、本社のあるサンノゼ周辺では10~11万米ドルとされ、その差は大きい。
単純な計算で、仮にエンジニア1人あたり年間5万ドルの差があるとすると、500人では2500万米ドル(約26億7千万円)。
シリコンバレーで開発を行った場合と比べると、毎年それだけのコスト削減効果があった計算になる。

Zoomの財務報告によると、2019年度の利益は798万米ドル、2020年年度は2625万米ドルなので、2500万米ドルの差。
この人件費の米中格差がZoomの収益に与える影響の大きさがわかる。
2019年度の財務報告書によると、Zoomが研究開発に投じた資金は3300万米ドルで、これは当年の売上高の約10%にすぎない。

成長途上のIT企業は一般に研究開発投資が売上高の20~40%に達する例が多く、かなり少ない部類に属する、としています。
これを見ると、「テクノロジー」で勝負する時代になっても、「研究開発」で中国の人口の多さに優位性が存在していることに気が付きます。 ****************************************** *
⇒「中国ビジネス攻略のヒント」バックナンバー: www.chinawork.co.jp/kousin-mg2020.html

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